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Chimeのmrhsのレビュー・感想・評価

Chime(2024年製作の映画)
4.0
インスタグラムでは日々"映え"の意味を勘違いしたような薄気味悪いカラフルなグルメ動画が大量に出回っているし、そもそも映画とグルメの相性は良くはない。『バベットの晩餐会』ですら俺は苦手である。

で、この黒沢清のグルメ映画=料理教室の先生を主人公にした禍々しい映画はどうだ。目と心が洗われるようではないか?まぁ食欲はなくなるが……。

ツッコミどころは極めて多いが、こんな映画を撮れてしまう人にオフィシエの称号を授与するフランスは偉い(のか?)。

久々に斜め上方向へ全速力で向かう黒沢清の本気を見たというか、あのSNSでたびたび話題になる『降霊』のバグパイプが鳴り響く瞬間(を俺は偏愛している)のような新鮮な驚きを今再び体験できたことを嬉しく思う。『LOFT』とか『蟲たちの家』の黒沢清が20年ぶりに帰ってきた。やはり手癖で『モダンラブ・トーキョー』とか撮ってる場合じゃないんですよね。

彩度の低く、生気を失ったような画調とこれまでとテイストが異なる(としか言いようがない)長回しの組み合わせはちょっとツァイ・ミンリャンを思い出させるが、平気で人が死んでいき、暴力が噴出する様はさすが黒沢清と言わなくてはならない。

キャラクターの造形が全員どこかズレているのだが、それをいかにもな笑いに繋げないところが黒沢清たるゆえん(例えば高橋洋と比べるとどうだろう)。来年70歳を迎える黒沢清の未来は明るいかもしれない。
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