てっちゃん

beliefのてっちゃんのレビュー・感想・評価

belief(2007年製作の映画)
3.7
カルト宗教映画祭りの2本目です。

いつものミニシアターで宗教映画特集をやっていたこともあり、私もそれに便乗したのですが、そのいつものミニシアターで上映されていたのが本作。

土居哲真監督さんの舞台挨拶があるっていうこともあり、劇場内はほぼほぼ満員御礼。
ちなみに本作はいつものミニシアターでも以前に上映されていたんだとか。
土居さん自身、岐阜の大学へ通っていたこともあり、よく通っていた劇場だったようでなんだか親しみを感じてしまいました。

そんなわけで本作内容と土居さんのお話していたことをまぜまぜして、練り練り書いていきます。

本作は土居さんのお母さんがカルト宗教(話題の旧統一教会。ちなみに土居さんが舞台挨拶の際に敢えて統一教会と呼んでいたので、ここでもそのように表現します。)である統一教会にのめり込み、多額の献金をして、なんとか土居さんが脱会を促すといった内容のセルフドキュメンタリー作品。

ちなみにお母さんが統一教会へ献金していた額は1600万円。
その他合わせて2200万円にものぼる。
最終的な話をすると、献金した9割が返金されたとのこと。
文字で現しても如何に狂っているのかが分かる。

ただし本作には、土居さんが統一教会側と争う場面など描かれない。
私が思ったのは、土居さん一家のこれからを描いているなということ。

土居さんは本作制作前にうつ病を患った。
そんな中で母親が統一教会にはまり、子供が生まれる。
つまりは自分とどう向き合うのか、家族とどう向き合うのか、それを映している要素が強いと感じたわけだ。

全編に渡って、本作は画面が暗い。
だから何がどうなっているのか分からない部分も多く、時折街の風景が急に入り込んだりする。
内容も家族へのインタビューがあったり、家族との生活を映したと思ったら、いきなり統一教会の人?と思われる人へのインタビューや宗教学者や弁護士の方へのインタビューが挟まれて、また家族へ戻ってきて、はっ!とさせられる。

ここで土居さんが舞台挨拶で語っていたことを(一言一句正確に覚えておりませんのでご了承を)。

「カメラを介すことで話ができた」
土居さんがうつ病を患い(今も薬は飲み続けているそう)、しかも母親がカルト宗教にのめり込んでしまっているとき、対面だとなかなか話ができなかったよう。
そんなときに、カメラを介して会話をしてみるとできたんだそう。
だから本作がインタビュー形式が多いのはそういうことも関係あるのではないでしょうか。

「迷子になった自分がいて、迷子になって欲しかった」
土居さんが本作を製作していくうえで、何が正しいのか、何が悪いのか、どうすれば良かったのか、これからどうすれば良いのかと迷子になったんだそう。
だから本作を観ていて、なんだか分からない気持ちになる正体は、土居さんが狙ってやっていることなんですね。

本作製作期間は3年間くらいで、カメラは常時回していたわけではなく、土居さんは本をずっと読んでいたんだそう(そのときに統一教会関連の本も沢山読んだとのこと)。

お母さんは、もともと訪問販売で高額商品を買ってしまったりと、”そういう商売”に騙されやすい方だったよう。
でも家族からの説得で、最終的には脱会したみたいで本当に良かった、、。

どこかのカルト宗教とずぶずぶのどこかの国のどこかの人が、山上容疑者の母親の高額献金に対し「競馬でスったと同じじゃないですか」と発言したようだけど、本作を観て欲しい。

これでも同じこと言えるの?、自分の家族や身内が被害にあっても同じこと言えるの?、なんで頭から馬鹿にするような言動なり考え方をするの?、人の良心や苦しいときを狙って金よこせと言い、払わなければ地獄に落ちるぞとか言うのと同じことなの?、、、本当にその思考になる経緯が理解できないし理解したくもない。

いろんな考え方をするのは大いにすべきだと日頃から思っているけども、人間としての大切な部分を欠いた考えは、自分には受け入れられないし、お互いに理解し合えないなと思う。

カルト宗教映画とは言っても、本作はかなりの異質な存在であり、このような作品を”今”上映してくれた劇場へは感謝しかありません。
てっちゃん

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