踊る猫

インビクタス/負けざる者たちの踊る猫のレビュー・感想・評価

4.3
実にシブい映画だ。重厚で、敢えて言えばやや難解か。ネルソン・マンデラの獄中での苦悩や、あるいは根強く残るアパルトヘイト政策が生み出す白人とアフロ・アメリカンの対立を、意図的に/計算高くセンセーショナルに描かずに手堅いアプローチで描き切ったクリント・イーストウッドの技量は見事という他ない。悪く言えばその分エンターテイメント性に乏しいきらいがあり、観ていて眠くならなかったかというと嘘になる。スポーツを通して、いがみ合っていた白人とアフロ・アメリカンがひとつになるそのシーンは感動モノだ。だが、と思う。これはある意味では国威の高揚を描いたタカ派的映画なのではないか、とも。その危険性を見据えて挑まなければ読み取れない映画だろう。難解、と書いたのはそのせいだ。断じてスポーツによるナショナリズムの誕生、と読み取ってはならない。人は変わり得る。そのメッセージをこそ読み取らねば。
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