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浪人街 RONINGAIのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

浪人街 RONINGAI(1990年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

幕末、夜鷹や浪人が集まる下町の中で、夜鷹が次々と斬られていく事件が発生する。犯人は遊び半分に凶行におよぶ旗本一党。大店の商人や同心もグルで、とても手出しは出来ない。そんな中、街の世話役が殺される。仇討ちに行き、捕ったお新を助けるために、普段は役立たずの四人の食いつめ浪人が立ち上がる…。

個性的な役者を揃えた、負け犬の美学とでもいうべきものを描いた物語。
時代劇ではあるが、70年代の邦画にありそうな都会の片隅で生きる人生負け組のうらぶれた人間模様がメインだ。
その分、浪人たちが自分の置かれた立場に対し、鬱憤を晴らすようなラストの大立ち回りは、とても見応えがある。

主演の4人の浪人たちは、どうしようもないロクデナシばかりだ。
原田芳雄は学問に挫折したヒモ。
勝新太郎は呑んだくれの太鼓持ち。
汚れ仕事に不満を抱く石橋蓮司に、内職で食い繋ぐ田中邦衛…と主演4人は負け犬ばかり。
現在の自分を嘆く、または開き直った生き様の描写がダラダラと続くのが難点か。
何とも煮え切らず、焦ったい。

だが、その4人の姿に、中高年は共感しきりだろう。
それは「俺の人生、こんなはずじゃなかった…」という後悔だ。
夢を見て、都会(江戸)に出てみたけれど、叶わずにくすぶり、無為に時は流れる…。
だけど、男は強がっていたい。
そんな気持ち、若造には分かるまい…。

最後の立ち回りは、義理と人情を大義として「死に花」を咲かせようとした行為。
平和な時代が長く、人を斬ったことなど無く、ほとんどの者はまともな剣術を披露しない。

力任せに刀を振り回し、ヨロヨロとフラつきながらも出鱈目に切り捨てる原田芳雄。
甲冑を着て馬に乗り、颯爽と登場するも、騎馬による戦いが不慣れな田中邦衛。
呑んだくれて、高みの見物を決め込む勝新太郎。
最後に死に装束で飛び込んでくる石橋蓮司の鬼気迫る居合斬りのみが圧巻。

浪人たちは何とか勝利するのだが、何も変わらぬ明日がやってくる。
この映画でまともなのは女性だけ。
体を張って稼ぎ、子供を育て、仲間の死に泣き、仇討ちまで決意する。
結局、男は女性には敵わない。

幕末の太平の世で、もはや侍にもなれない負け犬たちの一世一代の命掛け。
男は面子にこだわる滑稽で無様な生き物だと、教えてくれる時代劇だ。
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