こたつむり

スターダストのこたつむりのレビュー・感想・評価

スターダスト(2007年製作の映画)
4.0
★ 星はなんでも知っている…

うはは。これは地味に良作。
作風はファンタジーの皮をかぶったコメディ。
マシュー・ヴォーン監督の手腕が遺憾なく発揮された娯楽作品でした。

何しろ、最初から飛び道具感が満載なのです。
物語の発端は、主人公が憧れの女性に求婚したくて「空から落ちてきた流れ星を献上するよ」と誓うところから。うん。メルヘンですねえ。

でも、実は。
その流れ星は女の子でした…ってこの時点で首を捻りたくなりますが、それが発覚しても「よし。この女の子を献上すれば結婚できる」と宣う主人公って…えーと。何ですか、その価値観。

そうなのです。
本作は理屈で捉えてはいけないのです。
感覚で捉える作品なのです。

だから、馬車ではなくヤギ車だとか。
宿屋の主人がヤギだとか。ヤギとユニコーンが頭突きするとか。やたらとヤギ推しでも「めえめえめえめえ」と鳴きながら楽しめば良いのです。

また、それを脇で支える実力派俳優たち。
ロバート・デ・ニーロ演じる《空飛ぶ海賊》が踊る怪しげなダンス。ミシェル・ファイファー演じる《黒き魔女》が若さに拘泥する無様な姿。そんな贅沢な好演に頬を緩ませるのも本作の見どころと言えましょう。

そして、根底に流れるのはイギリス特有の空気。町はずれの沼地からブクブクと浮き上がるような毒素が足元を這いずり回っているので、ご都合主義とも言える展開が逆に微笑ましく感じるのです。

まあ、そんなわけで。
大人のための夜伽話を真摯に描いた物語。
笑いのツボは千差万別なので無条件でオススメ出来ませんが、この筆致を好意的に受け止めることが出来れば楽しめるのじゃないでしょうか。

また、マシュー・ヴォーン監督の他作品に比べたら毒々しさは控えめ。早熟な子供とならば、一緒に鑑賞するのもアリだと思いますよ。
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