xyuchanx

ジョー・ブラックをよろしくのxyuchanxのレビュー・感想・評価

4.9
最初にみたのは2000年頃だけど、齢を負うごとに、観るたびに魅力が増す大切な映画。いつかちゃんとと思ってたレビュー書きます。

#実は入院してて暇 #片目はツラい

巨大メディア企業を一代で築き上げ、絶対王者の如きビル・パリッシュ。65歳になるビルを迎えにきた死神は、彼が愛娘スーザンに語る「愛あってこその人生」という言葉に興味を持ち、ビルの死期を先送りする代わりに、”人生”のガイドをビルに強いる。

序盤、一瞬の衝撃シーン以降、大きな出来事も無く展開するが、全編にわたり機知に富んだ会話劇に引き込まれる。愛、死、孤独、家族愛、尊厳、忠誠など様々な要素が重なり合いつつも常にメインテーマである「愛と人生」に寄り添う言葉たち=脚本は見事。

プラッド・ピットが最も美しい映画と言われる通り、感じのいい若者役もさる事ながら、死神の威厳と気品を保ちつつ数々の「初体験」を子供のように生き生きと演じる表情は魅力的。またヒロイン役のクレア・フォーラニの気品ある視線、立ち振る舞いや間の取り方などはなんとも言えない魅力があり、無名なのが不思議でしょうがない。それらにも増して唯一無二なアンソニー・ホプキンスの威厳と迫力。彼が居るだけで作品に締まりが増す。

ちなみにこの作品、実は当時のゴールデンラズベリー賞で最低リメイクおよび続編賞にノミネート(原作は1934年「明日なき抱擁 / Death Takes a Holiday)されてます。原作ファンの落胆なのか、反ブラピ勢の嫌がらせか、もしくは長く哲学的な会話劇に退屈した人々による酷評なんだろうか。ホントに勿体ない。

また、映像の美しさも魅力のひとつで、撮影を担当したエマニュエル・ルベツキは数々の作品で撮影賞を獲得してます。
2006年 トゥモロー・ワールド
2011年 ツリー・オブ・ライフ
2013年 ゼロ・グラビティ
2014年 バードマン
2015年 レヴェナント


2杯目のコーヒーを入れるシーンでの動作シンクロ、カフェを出て雷に打たれ何度もお互いを振り返りながら別れるシーン、そしてファンの多い「Peanutbutter Man」など、忘れられないシーンも多く、印象的なセリフの宝庫でもある。

一部をあげると、

「Life needs somebody you can’t live without 〜 The lightning could strike」は映画を通じて説かれる。

キューバ訛りが聞き取れないけど、老婆の
「この世の人間もみな孤独。もし運が良ければあの世に思い出を持っていける。」という言葉。

「千年に永久を掛けて無限の時を加えろ。それが私だ」という死神の言葉。
「〜〜、それに無限と永遠を掛ければ愛に近づく」と愛を説くビル。

役員会での「Death and Taxes」と、裏切り者追放シーンでの「Death and Taxes」。

あなたが誰であれ一緒に行くと言われる幸せと同時に、彼女を最初に打ち抜いた稲妻は自分ではなかった事を悟るジョー。どんな役者でも、このシーンを演じるのは勇気がいるだろう。

言わずと知れた名曲「What a wonderful world」「Over the Rainbow 」の2曲使いがこれほど馴染むかというシーケンスから、人生の美しさと儚さを思わせる花火に死神の涙。

「去りがたいものだろ?それが生きた証だ」

確かに3時間と長い映画だが、何度みても長すぎると感じない。そして、去りがたい。もっと彼らの人生をみていたかった。
xyuchanx

xyuchanx