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ミラーズ・クロッシングのleylaのレビュー・感想・評価

ミラーズ・クロッシング(1990年製作の映画)
4.2
なんだろう、このジワジワ沁みてくる感覚。何がその原因か知りたくて2度観ました。ギャング映画のカタチをとってるけど、裏テーマは“同性愛”に思えた。以下、勝手な考察。

ボスに対する部下の裏切りと忠誠の話。ただのギャング映画を越える雰囲気で、それが愛なのか情なのか友情なのか忠誠心なのかはわからない。でも、観終わって、愛だったのか…と思うとものすごく余韻が残るのです。切ないのです。片思いの物語なのかもしれません。

帽子が何度もメタファーとして出てくる。本当のところは全然違うと思うけど、私はハット=ハート(ボスへの愛)なんじゃないかと思って観てました。大切だから手放したくない、どれだけ大切にしても飛んでいってしまうもの。「帽子を追うなんてバカげてる」そんなセリフもしっくりきました。作品中でトムは“ハートがない男”と言われます。ハートのない男が、ボスのレオへのハートは最後まで失わない。

キャスティングが巧みです。主役のトムを演じたガブリエル・バーンの知的で物静かな雰囲気、ボスのレオ役のアルバート・フィニーの大御所なのに包まれるような優しい雰囲気、レオの恋人ヴァーナ役のマーシャ・ゲイ・ハーデンの男勝りな態度、ヴァーナの弟役のジョン・タトゥーロの嘘くささ、早口のブシェミのぞんざいな使われ方…。適材適所の配役が最高に効いてます。

ジャケにもなっているクライマックスの森のシーンが素晴らしい。木立の中で銃を構えるガブリエル・バーンと、みっともなく命乞いするジョン・タトゥーロの迫真の演技。曇り空を待って撮ったというシックな色彩。黒いコートとハットのギャングが森の中を歩くというだけでもクール。

タトゥーロのシーン以外にも、好きなシーンが山盛り。森で風に飛ばされるハット、レオの銃撃と葉巻の演出、ヴァーナに殴られてよろつくトム、ワンコと少年とズラetc…

いつものコーエン兄弟のクセは少ないけど、脚本も演出も撮影も素晴らしくて、コーエン兄弟がますます好きになりました。コメディ感とシリアス感が絶妙にマッチしているところも好きです。
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