note-director
ペイン監督というカンジだ。
地味で小憎たらしいぐらい愛すべき人間味。
どなたかの評に、アカデミー賞はオッペンハイマーではなくこっちだ、と書かれてあったが、それはちょっと言い過ぎだと思う。
脚本も俳優陣も素晴らしいが、映像的に、うおおお、というところはない。音楽も心地よいが、刺激はない。この監督のこのジャンルは、ハデな賞をもらわず固定客に愛されればいいと思う。
登場人物はだれひとり極悪人はいない。しいて言えば、最後のレストランのおばちゃんウエイトレスは、たしかにファシストでビッチだ笑。
ハーバード大のお金持ちで優秀な同期と、寄付親優先の校長先生は、世の中こういうヒトが出世するのよね、の代表格だった。
一見、うざいおやじや若造も、それぞれ事情を抱えていて、なかったことにしたい過去やら、家族の確執やら、リアル日常でもたまにある。
それらがだんだん判明してきて、なんやおまえいいやつじゃんみたいな映画の構成はペイン監督の得意技ですが、地味すぎだったし、読めるところもあった。
特にアンガスのお父さんのくだりは、映画あるあるで、子どもの思いが先走り、愛を期待して施設(病院?)に行くとロクなことがない。
本人がよけいに傷つく。
あの先生らしい思いやりと正義ではあるが、結婚したこともなく子どももいない先生は、複雑な家庭事情まで考えられなかったのであろう。現実はそう甘くない。
アンガスの母親は、決して悪人ではなく、むしろこの映画の中で、一番大変な事情を抱えているヒトである。
アンガスかばって、自分を犠牲にした先生、疑似父親にもなれたし、ポリシーも貫き通せたし、これはこれでハッピーエンドだわね。
このお年と、ごまかし学歴では、再就職は難しいけど、どのみちあのクソ校長の下では続かないだろうし、
きっと成長したアンガスが助けてくれる日が来るわという予感がする。
個人的には、アンガスがもうちょっとガキっちい俳優さんの方がいいと思った。
メアリーのは女優さんは、地味さと、控えめで堅実な演技がとても良かった。もし、クィーン・ラティファや、オクタヴィア・スペンサーだと、そっちのストーリーの描き方が盛大に変わってきちゃう。
そして70年代アメリカの劇中のお料理がお見事だった。フードコーディネータさん素晴らしい。