Azuという名のブシェミ夫人

夜空に星のあるようにのAzuという名のブシェミ夫人のレビュー・感想・評価

夜空に星のあるように(1967年製作の映画)
3.5
テレンス・スタンプ主演『イギリスから来た男』を見ていたら、主人公の若い頃としてこの映画の一部が使用されていたので、気になって見てみた。

ケン・ローチ監督得意の労働階級(その中でも特に低い)のどうにもならない生活を、まるで一人の女性のドキュメンタリーの様に描いています。
キャロル・ホワイト演じる主人公は若くして考えもせず、暴力的でろくでもない男と結婚・出産する。
夫は仲間たちと犯罪に失敗して、投獄される。
その彼女を支えたのが、事件の時に運よく逃れた仲間の一人テレンス・スタンプ。
でも心優しい彼もまた、まともに働いて食べてはいけない人間。
出来事は繰り返される。
彼女もまた幸せを夢見ながらも“現実”から抜け出せない。

彼女の支えはデイヴ(テレンス)に手紙を書くこと。
その手紙の言葉は本心だと思う。
ただそれは未来への“希望”でしかなく、現実は毎日やってくる。
絶望的な寂しさや不安、そして生きていく為のお金。
それを埋めないことには、夢を持つことすら出来なかったんでしょう。
幼い息子が愛らしく、だけど彼の人生にもまた影が落ちるようで、不憫でならない。

若きテレンス・スタンプが思いがけず素敵。
タートルネックのセーターやピーコートが似合ってて、とても絵になります。
彼がギターを奏で歌うドノヴァンの『colors』という歌が良かった。