寿都

利休の寿都のレビュー・感想・評価

利休(1989年製作の映画)
4.8
テレビの大河ドラマなんかより、過激で重くてハマった!外国人に見せたら喜びそう。山崎努の秀吉が面白すぎるのでみんなに見ていただきたいイチオシ作品。山口小夜子の棒読み茶々姫も見れる。

茶の湯が懇親の場であったことは分かるが上流武士の嗜みであったこと、茶道と利休がこれほど権力者に重要視されていたことは知らなかった。と言うか何も知らなかった。わたし茶道部だったのに。
高潔な精神を曲げなかったために殺されたわけだけど(有名な話なのでネタバレ御免)、そもそも!なぜ利休が最も嫌いそうな成金趣味の秀吉に仕えて媚びていたのかが矛盾していて、釈然としない。最初はこんな奴だと思わなかった、人を見る目がなかったということだろうか。バカな秀吉とスマートな家康という描かれ方だった。
天下まで取る男が激しい芸術家コンプレックスであったケースは、ヒトラーと秀吉くらいなのではないか。それとも珍しくないことなのか。

「権力者と芸術家・文化人」の愛憎・確執というストーリーが面白いわけだけど、その芸術が茶道であることが日本の極めて興味深い点だ。
茶道ほど目的のはっきりしない文化は、この世で他にないのではないかと思う。コンセプチュアルアートなのですか?と言いたくなるほどだ。他の◯◯道と比べれば、技術的な習得、お点前自体はそれほど難しいものではないと思うし(怒らないで)「型」と言うほどのものか?と思ってる(言ってしまった)。中国のすごく長い急須でお茶を入れるアレ(名称不明)の方が茶道って感じがするw 利き茶をするわけでもなく、味・香りについて言及しないのも面白い。お茶がメインであってメインではない。哲学。空間作り。小宇宙。道楽。「名器名物をコレクションしつつも、インテリアに拘りながらも、それに囚われるな。いちばん大切なことは精神の豊かさだ。」と言うのも当たり前のことだ。当たり前のことが大切。尚且つ「わかりやすさ」を求めるのは無粋であると言われてる気もする。はっきりしないから「奥深い」で片付けられがち。

この映画のような本元の茶道、静かな世界には憧れる。現代の茶道界には、偏見もあるが、魅力がない。侘びではないし組織に所属したくないし、茶の湯でまで女らしさを求められたくないね。お金持ちになって自宅で…。
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