如水

利休の如水のレビュー・感想・評価

利休(1989年製作の映画)
3.9
実に見応えがある。
信長は自身が美しいと思った物を好む。他者の評価など関係なくである。が、秀吉の嗜好は、派手でわかりやすく誰もが羨ましいがる物を好む。その為、利休の侘び寂びの不完全な美というのは根本的に理解できない。ある程度のレベルに達してないとピンとこないのだ。例えるならば、E=ma2というアインシュタインの方程式の凄さが一般人には理解出来ないのににている。
そのためか秀吉は、利休の醸し出す気品や余裕のある物言いなど一挙手一投足が自身の劣等感を刺激する。 利休がへり下った態度を見せても、勝者が敗者に見せる余裕の様に感じられ更にイライラは募る。
利休は言葉にも態度にも出さないが、どこか信長と秀吉を常に比べていたフシがあり、成り上がりで頭の聡い秀吉の嗅覚はそれを的確に嗅ぎ取り、深層の中で深く傷つき恐れている。
この秀吉と利休のアンビバレントな関係が実に巧く表現できている。重厚感を出すために無駄なセリフをごっそり削ぎ取り、独特の「間 」とカット割りを駆使して作り込まれている。 これは作品そのものが茶道を表現している様に感じられた。
如水

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