映画大好きそーやさん

僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクストの映画大好きそーやさんのレビュー・感想・評価

3.7
シリーズ最高火力の作画でお届けする、古き良き王道ジャンプ漫画映画!
本作は、お誂え向きの敵役とその仲間たちを用意し、メインキャラクターたちとぶつからせるといった、往年のジャンプ漫画映画のプロットをヒロアカで再現した作品となっていました。
ヒロアカのこれまでの劇場版作品は、原作時系列の隙間を埋めていく内容で、それぞれ映画ならではのストロングポイントが用意されていましたが、本作はその要素が薄まり、どうにもヒロアカ劇場版で期待されていたストーリーにはできていなかったと思います。
これまでの例で言うと、メインキャラクターの明かされなかった過去や、原作では叶わなかった夢の共闘を描いた1作目、原作最終決戦の案を先んじて映画クオリティで仕上げるという禁じ手を使った2作目、映画キャラクターの丁寧な掘り下げ、世界規模の戦い、数多のキャラクターたちの十分な活躍描写をバランスよく描いた3作目と、どれもその劇場版だからこその強みを含めた作劇ができていました。
上記のようなストロングポイントを本作に当てはめると、全面戦争によって崩壊した社会でA組の面々がチームアップを行い、タルタロスに収容されていた「ダツゴク」などを捕らえていたといった、原作では深く描かれなかったA組のヒーロー活動描写や、緑谷出久のワン・フォー・オールによって発現した個性を使いこなす描写が当たるのでしょうが、正直言って弱さは拭えません。
過去3作のどれにも劣る引きな気がします。
前者は全体の比重としてそれほどなく、それこそ2作目に比べればその差は歴然だったと思います。
ダイジェスト的に、義務的にA組の活躍が描かれていく過程にはやや冗長さを感じ、大怪我を負わせてはいけない、全員に役割を与え、成果は残してほしいという無理難題を真っ当に処理しようとした結果、順当にグダグダになってしまったという印象でした。
また、後者においても3作目でその片鱗は見られましたし、オリジン組3人がメインに据えられているため活躍自体が薄く、これをストロングポイントにするのは物足りないと思ってしまいました。
ただ冒頭でも示した通り、作画に関してはジャパニメーション最高峰と言ってもいい出来栄えで、特に終盤の、オリジン組3人のバトル描写は頭1つ2つ抜けた、最高のアクションシークエンスとなっていて、それだけでも観る価値はあります。
他にもベタではありますが、映画オリジナルキャラクターの「愛」という想いがもたらす、2作目を思わせる「奇跡」には、理屈を超えた感動を覚えました。
ヒロアカらしくない2人の結末は、ある種作品の終わりを予感させるもので、不思議な感覚がありました。
オールマイトと並行して、ダークマイトの声も担当した三宅健太の演技も素晴らしく、しっかりと違うキャラクターとして立ち上がっていました。掛け合いのシーンは、大きな見どころと言って差し支えないでしょう。
あと、ファンにしか伝わらない部分ではありますが、ダークマイトがオールマイトの「次は君だ」を曲解して生まれた敵という設定もとても面白いと思いました。(触発されて社会に迷惑をかけてしまう。私個人としては、他人事とは思えないキャラクター造形でした)
総じて、往年のジャンプ漫画映画の王道と、ジャパニメーション最高峰の作画を堪能する、ファン向けの作品でした!