ニューランド

それはとにかくまぶしいのニューランドのレビュー・感想・評価

それはとにかくまぶしい(2023年製作の映画)
3.7
✔️【波田野州平短編集】🔸①『それはとにかくまぶしい』(3.7)🔸②『旅の後の記憶』(3.3)🔸③『影の由来』(3.5)▶️▶️

 一番期待の『~47KM~』新作が同僚の不意法事の代理勤務で観れなくなり、少しムッと何か代替作をと。この欄での評価点は、山形の特集から2、3本選ぶのに、参考になる。この作家については全く知らないが、妙に高く採点されてる。短編三本を観る。絶賛とは言いがたいが、中堅辺りに相応しい存在感はしっかりある。
 才気があからさまに感じられる、ショットへの姿勢や繋げ方が、ハイセンスと高等趣味の両方に引っ掛かってて、極めて高く評価もできるし、ちょっと気張りすぎてるなとすべきか、迷いはする①。水滴が打ちつける音や虫の声らが続く中、会わなくなった友にから、新しく会うだろう友達への呼び掛けのナレーションに移行し、また戻る流れ。妻の、過去の事実認識の不可能よりも、途切れない世代の受け継ぎの事実に感動の姿から、旧友が父(世代)に置き換わり、新友が誕生してきた2番目の子に置き換わり、分断はなくなる。イメージと掛け合わさり、かなり見事組立て、テキスト。
 最初の子供や出産時の妻だけはハッキリしたカットだが、あとは究めて素早く切り替わり、カット自体も写ってるものの正体は見極められず、次々継いでは流れてく。フィルターならぬ薄い布らを使い、陽光を大胆に取込み揺るがし、影が主体の所も多い。自転車からや左右パン速めで、その像も溶け流れる。自然や空、植物や鳥らも極短く押えられ挿入されてく。全体にもカット意味合いが認められない程、するどく素早いカッティングで、全てが秩序や整理とかけ離れ、今の隠とん的に住んでる家、周りの道や垣根、川や樹葉・空の囲みと伸び、シャボン玉や玩具らの遊び、暗さへのうつむき沈み、らが目まぐるしく朧ろでか掴めず、しかしなんとも妙に近しく、渦を巻く前に、ススーッて流れてく作。テキストと微妙にマッチしながら、子供に、これまで何も見ていなかった姿勢も改めさせられる作者。
 素材はスタンダードサイズのデジタルビデオだけでなく、古ぼけたイメージの8ミリフィルムやモノクロのそれも、自在に織り込まれる。
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 ②は、対象を絞り込み、存在するものから、自由だがしっかりと思索を巡らしてく。残されていた、多量の夫婦(他人)海外旅行の、スチル写真の戦後にしても旧いカラー。整理の並べ揃え方や妻の印象メモから、想像を膨らましてく。描写も終盤を除いては、流れを作りながら、写真を置き換えてくだけ。旅先の西洋の図内とは違う日本の光景への想いと分析。シンメトリーを好む西洋の秩序と・アジアの混沌、石造りの冷たさと暖簾だけでも人を和らげ招きやすい造りの日本、子供らの群れでも向こうは視線がきつい。それらのメモの再検討の作者の位置。が内容はともかく、これらの光景の過去は過去のままでしかない。しかしそれでも、こうして引き出して検討してく事で何かは動き始める、手応えも。
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 ①が最新作で一気呵成に作ったラフで刹那なもの、②③は旧作で、予め与えられたような素材を活かし、自由にしかし確実に論考や確立イメージを拡げていったもの。③はベース資料があるのか、特攻へ向かう戦地の夫から大量に纏めて届いた手紙に対し、生きてる可能性も膨らませ、返信の手紙を書き続ける妻、その両文面の往復書簡的、高まり。実際的ではないが、映画の作者達による脹らませは文学的であり、息づくものもある。イメージの撮り方も、自然や動植物、日常の光景に向け、しっかりと不安定さがなく、細部も持つ。無意味で未来のない不条理な状況で、日々のいきいきした小さな歓びを取り上げてゆく中で、②とおなじ、「生き(抜い)て、死んでく事だけは、確か」へ行き着き、その繰り返しと受け継ぎの流れを自己の内でものして、未来と生をナマに感じてく。
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