新旧ボンド対決その②、12年振りのコネリー・ボンド復帰作は『サンダーボール作戦』セルフリメイク。
アーヴィン・カーシュナー監督の手堅い演出に加え、女殺人鬼ファーティマを嬉々として演じるバーバラ・カレラの怪演、華々しいデビューを飾ったキム・ベイジンガー。ブロフェルドにはマックス・フォン・シドーとキャストは超豪華。
Mrビーンこと、ローワン・アトキンソン扮する間抜けな英国大使館員ナイジェルや、偏執狂的なラルゴとの核戦争ゲームなどはムーア作品への意識も大きく感じさせる。
冒頭の再起をかけてトレーニングに励むボンドや、ゆったりとしたラニ・ホールの主題歌、年下のMなどは加齢を加えた設定を上手く活かしている。
アクションシーンもスティーヴン・セガールのコーディネートのもと多くを本人がこなしており、タンゴのシーンや乗馬アクションも吹替無し。
しかし、本作で最も印象深いのは『ムーンレイカー』の没案を再利用したバイクアクション。イオンプロに先駆けての実現は、黒人のライターなど本家シリーズへの逆輸入も多い。
イオンプロのプロデューサー、アルバート・ブロッコリの妨害工作により、本家のスタッフの多くが参加を憚ったことにより、スタッフの不慣れさやお決まりのガンバレルやジェームズ・ボンドのテーマが流れないことでの盛り上がりに欠ける印象は否めない。高い期待と好意的な批評家の前評判にも関わらず、『オクトパシー』と興収・評価共に大きく水を開けられる。
ジャズなどを取り入れた独特のサウンド、ハリウッドにおける一流の視覚効果に、『サンダーボール作戦』水中撮影のリコー・ブラウニングの再登板がもたらす、オリジナルよりのグレードアップ、本家コネリーボンドの延長戦としてのストーリー、ラストの粋なセリフとウィンクは良い。