ハッドの作品情報・感想・評価

「ハッド」に投稿された感想・評価

えいじ

えいじの感想・評価

3.5
モノクロの方が顔を覚える
シズヲ

シズヲの感想・評価

4.0

このレビューはネタバレを含みます

気が付けばレビュー500作目。西部神話の零落の臨界点、すなわちカウボーイの死。牧場を経営する親子の虚しい確執が疫病に犯された家畜を軸に描かれる。変わりゆく時代に迎合しようとしない保守的な父親、反抗によって古き時代を死滅させる破壊的な息子。過去と現在を担う二人の男が互いに「時代の死」を象徴しているのが余りにも惨たらしい。父親が「いとしのクレメンタイン」を歌うノスタルジックなシーンがあるのは実に確信犯的。ニューシネマ期ならまだしも、60年代前半にこの段階にまで到達しているのは凄まじい(監督のマーティン・リットが赤狩りの犠牲者だったことを考えると興味深い)。

映画自体は終始に渡って地味で、些か淡々とし過ぎている演出や憂鬱な題材も相俟って長尺に感じるきらいはある。ポール・ニューマンも本人の魅力のせいで「カッコいい」風に映ってしまうのも若干の問題か。それでも牧場一家の関係性がじっくりと描かれた哀愁滲み出るドラマは役者陣の好演もあって印象に残る。親子二人とそれぞれ関り合いながら少しずつ心境を変化させていく甥っ子、気だるげな雰囲気を纏いながらも気丈に振る舞うメイドの味わい深さ。そして親子の対立の果てに彼らの「帰る場所」が破綻を迎えるやるせなさ。カリスマ的な反逆児のように見えたハッドの人間性の欠陥が映画の進行と共に浮き彫りになり、最終的に家族全員から見放される結末をもたらすのが哀れ過ぎる。

疫病を患った牛達の殺処分シーンの虚しい轟音に加え、生きる気力を奪われた父親の最期といったラスト付近の場面から滲み出る「終焉」の匂いは痛切極まりない。そして伽藍堂になった殺風景な牧場と変わることを拒んでしまったハッドの虚無性。例え本当に油田の可能性があったとしても「あそこから何かが生まれることは無いのだろう」と否応なしに感じてしまうラストの余韻に打ちひしがれる。ここで描かれる西部劇の死に様に美学なんてものは一切無く、ただただ緩やかに寂しく迎える滅びでしかない。余談ながら甥っ子の役者は「シェーン」で去りゆくガンマンを見届けていた子役なだけに、二度に渡って時代の節目に立ち会った感がある。
tristana

tristanaの感想・評価

4.5
上映前に観客全員で「愛しのクレメンタイン」を歌うテキサスの映画館😭
No.404[あのまま石油でも掘リ当てて成功してそうだよね] 80点

女系家族の居ない家庭で唯一の女性が30代半ばの家政婦という状況の中、ぐうたら主人公とその老父とうら若き甥っ子の視線を全面に集めているパトリシア・ニールの声のエロさといったら、何物にも代えがたい。ぐうたらポール・ニューマンも甥っ子に"俺の昔とは大違いだぜ"とか言ってるわけで、こりゃ絶対甥っ子殺して話が終わるなと思ったら、既に兄を殺していたとかいうテンプレ設定に悶える。ザ・田舎の初な青年顔のブランドン・デ・ワイルドも最高。どこかで観たことあると思ったら、シェーン!って叫んでた坊やだそうで。

若者は皆ハッドに憧れる、ってそりゃそうでしょ。親の金で毎日朝から晩まで遊び歩いて、可愛い女だったら人妻でもモノのして、家に帰りゃいい感じの家政婦が料理やら掃除やらをやってくれているんだもん。そりゃあ誰だって憧れるでしょう。そんな可愛げのないぼんくらバカ息子が迎える結末は、正しく現代に溢れかえった"自由に生きる"と"自分勝手に生きる"を履き違えた勘違い男の末路だった。思い知ったか!と心にもない()ことを言ってみるが、なんとなくだけどあのまま石油でも掘り当てて成功してそうな感じするよねー。人生イージーモードってか?!どこまでも羨ましい野郎だな、おい!
yadakor

yadakorの感想・評価

3.0
ポールニューマンは知的な役が多い印象だったけど、この映画ではいくぶん粗野な役を演じていて、本来の魅力を出しきれていないような気がしないでもない
カウボーイの映画なのにラジオとか車とか出てくるたびに西部劇じゃないんだったってなって面白い
hrt2308

hrt2308の感想・評価

-
静かな人間ドラマ。

牧場を営むバノン家の息子ハッド(ポール・ニューマン)は夜な夜な酒・女と遊び歩くような生活をしていた。亡き兄の息子ロン(ブランドン・デ・ワイルド)はハッドに憧れているが、叩き上げの父ホーマー(メルヴィン・ダグラス)はハッドと反りが合わない。家政婦アルマはハッドのことを密かに想っている。ある日、一家の牧場の牛に口蹄疫が発生する、、、。

マーティン・リットは淡々とした語り口の中に、父と息子、叔父と甥、祖父と孫の身内ならではの愛情と感情の行き違いを繊細に描いている。ハッドとアルマの不器用なすれ違いの描き方もまったくもって、観ていて歯痒くなるほど人間的だ。

まだ円熟する前の尖ったポール・ニューマンの素直じゃない個性。パトリシア・ニールのアンニュイさ。メルヴィン・ダグラスの存在感。「シェーン」で子役だったブランドン・デ・ワイルドが成長した姿が見られるのも貴重。
青山

青山の感想・評価

3.7

牧場を営む一家。生真面目で頑固な父親と、放蕩息子のハッド。そしてハッドの甥っ子のロンと、メイドのアルマ。
ある時、牧場の牛が口蹄疫にかかったことをきっかけに彼らの関係性は崩壊していき......。


父と息子の確執もの。
主要な登場人物はこの4人だけで、構図がシンプルな分、お互いへの感情は複雑なところまで描けている、なかなか見ごたえのある人間ドラマでした。

主人公はタイトルになってるハッド氏なのですが、見てる我々の視点は甥っ子くんに同化していきます。

フラットな甥っ子くんの目から見る祖父(ハッドの父)の姿は、勤勉に働き、自分の体で働いて得たお金で慎ましく暮らし、他人に迷惑をかけることを自らに許さない、人間の美徳を体現したような人物として描かれます。
一方のハッドは、そんな父親に育てられた反動からか、他人を踏み台にしてでも自分と身内が苦しまないやり方を選び、欲望には忠実に行動するという、人間の本質にある利己的な面が強調された(しかしその範囲内での優しさも持つ)人物として描かれる。

この2人のギャップと、その2人共から影響を受けていく甥っ子くんの成長具合がなかなかじわじわくる作品なのです。

まぁなんせ2人共わりと極端な人なので、甥っ子くんにはどうか両方のいいところを吸収して幸せな人生を送ってほしいなーという感想。そして私もそうありたいという教訓。
haccabee

haccabeeの感想・評価

3.5

このレビューはネタバレを含みます

観ていて楽しいタイプの映画ではない。甥のロンが叔父ハッドに愛想を尽かしたのが、この物語における唯一の救いかも。ハッドは多分変わらない。あのまま生きていくのだろうと思う。彼は事故で兄を死なせたことが厳格な父ホーマーに愛されない理由だと思っていたが、父は「それ以前に見限っていた」と言う。二人の関係は修復不可能だったろう。口蹄疫を誤魔化そうとする息子だから、さもありなんだが。ホーマーがロンに言って聞かせた「いつかは人生を選ぶことになる」という台詞どおり、登場人物それぞれが否応なしに選んでいく。メイドのアルマが去っていくシーンは、そんな人生の悲哀を感じさせる。
BSプレミアム、字幕版にて初観賞。
今も昔も口蹄疫は恐ろしい病だと知る。
ロンから見たアメリカの理想としての祖父、現実としての叔父とも見えた。
satchan

satchanの感想・評価

3.0

このレビューはネタバレを含みます

白黒映画です。ポール・ニューマンが牧場主の息子ハッド役で、父親ホーマーと甥ロンと暮らしています。「オレンジなら、テキサスにもあるのに、カリフォルニア産とは結構なことだ」みたいなセリフがあったので、舞台はテキサスかな。男3人暮らしなので、アルマという女性が住み込みで家事をしてくれています。アルマの独特の声と話し方が印象的でした。アルマ役のパトリシア・ニールがアカデミー主演女優賞を、父親ホーマー役のメルヴィン・ダグラスが助演男優賞を受賞している作品のようです。ハッドは人妻をひっかける遊び人ですが、家政婦のアルマをめぐって、甥のロンとは恋敵です。

ある日、一頭の牛が死んでいるのを見つけ、獣医さんにみてもらうと口蹄疫の可能性を示唆されます。周りに死肉を狙うバルチャーが沢山映っていました。口蹄疫の検査に6日かかると言われ、その間の居ても立っても居られない親子の様子が描かれます。牧場存続の危機なので、当然のことだと思いました。ハッドは早く父親の牧場を継ぎたいと考えているのですが、父親はそれを認めません。その理由は、ハッドのお兄さんの死と関係がありました。ハッドのお兄さんは、ロンの父親でもあるのですが、ハッドが飲酒運転していた車の交通事故で亡くなったのです。そのことで、ハッドと父親ホーマーの関係は、ギクシャクしています。昔の映画って、親子関係のギクシャクを描いているものが多いですね。

Quarantine(隔離・検疫)と書かれた看板が印象的でした。検査の結果は最悪で、口蹄疫だと分かり、大切に育てた牛を殺傷処分することになります。このシーンはやはり衝撃的です。ブルドーザーで穴を掘り、牛を穴に追い込み、ライフルで打ち殺すのです。そして埋めてしまう。他の家畜への感染を考えたら、仕方のないことなのかもしれませんが、人間の観点からするとでしょ、と思えるから心が痛むのかな。食肉が必要なのは人間なわけで。でも、全ての牛を野に放したとしても、やがて死んでしまうし、感染が広がってしまうかもしれない。避けられない、逃げられないジレンマです。

頑固なお父さんホーマーが大切にしているロングホーンを自分で殺すというシーンも、ぐさっときました。孫のロンが、「ロング・ホーンだけは、逃してあげようよ」という気持ちも、痛いほどよく分かります。全ての牛を失い、ホーマーは使用人を解雇します。家政婦のアルマも、出ていくことに。そして、ホーマーが落馬して、この世を去ってしまい、ハッドを慕っていたロンまで、ハッドに愛想をつかし、牧場を出て行ってしまう…という悲劇につぐ悲劇。望み通り、牧場を継いだけれど、土地を売り払ってしまって、一人残されたハッドの心情はどうだったのでしょう。万々歳とはいかないと思うのですが。

いくつか時代を感じる小道具がありました。ロンが胸ポケットに入れたラジオに、一瞬、アイポッド?と錯覚を覚えてしまいました。それともう一つ。ハッドがビール缶を開ける時に、缶切りで2箇所穴をあけているんです。プルタブって、昔なかったんですね~。今度、ビール缶を缶切りで開けて飲んでみようかな、なんて思いました。
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