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不意打ちのRのレビュー・感想・評価

不意打ち(1964年製作の映画)
4.7
強烈! この時代のアメリカって、当たり障りない数々の名作の中に、時々こういう狂ったギラギラ強烈な作品があるのでおもしろいなー。まず不吉すぎるオープニングクレジット! とんでもなく心がザワザワ…洋題のLady In A Cageにちなんだ縦線のアニメーションが、車通りの多いストリートの異様な光景に繰り返し挿入され、陰惨なラジオのニュースと不気味な音楽が鳴り響く。ベルイマンの仮面ペルソナとか勅使河原宏の映画のオープニングを髣髴させるキチガイ感。一気に引き込まれる! 主人公は50前後くらいの裕福なおばさんで、息子とふたり暮しをしてる。ふたりはまるで恋人同士のような関係、母をダーリンと呼んだり、妙にベタベタしたり、実に気持ち悪い。この息子が数日出かけるということで、ママに置き手紙を残していく。そこには自殺するという文字が…。そんなことはつゆ知らず、腰を悪くしてる夫人は簡易エレベーターで二階へ上がろうとするのだが、途中で家の電気が切れてエレベーターに閉じ込められてしまう。まさに檻の中の夫人。すぐに何とかなるだろうと思ってたけど、どうにもならず、焦り始める夫人は家の外に鳴り響く用の警報ボタンを押しまくる。だが押せども押せども騒音と無関心で誰も立ち止まらない。そこに浮浪者が通りすがり、警報を聞いて家に入り、おばはんはほっといて金目の物を盗んで質屋に売ってやれ! ってなる。そこにさらに売春婦や頭のおかしい3人のゴロツキどもが加わって家を荒らしはじめ、徐々にエスカレートして恐怖と絶叫のすさまじいカオスになっていく、という話。前半は身動きできない夫人の周りで起こる喧騒がウザすぎてうんざりグッタリ。浮浪者は気持ち悪いし、ゴロツキは下品で暴力的で頭がおかしい。何でも持って行っていいからとにかくエレベーターから出してくれ、と懇願するおばさんを尻目に、部屋を荒らして金目の物を盗み、互いを苦しめ合うことに余念がない彼ら。見てるこっちからしたらゴロツキのリーダーがイケメンなのが唯一の救い。と思ったら何と後の大スター、ジェームズカーンではないですか! 若い! 彼は夫人をHuman beingと呼び、人間が檻の中に閉じ込められ、猛獣たちが外で暴れまわっている、という構図を強調するのだが、彼ら自身もやはり人間であり理性がある、ゆえに、自然の摂理にコントロールされてる猛獣より一層タチが悪いのである。ところが! 終盤になると何と! この構図にまさかの大転換! アッと驚き、鳥肌総立ち! そこに至るプロセスがものすごくエキサイティング! 何と、そういう話だったのか!!! 全編ずっと最高に忌まわしい悪夢を見てるようなムードで、熱病のようにハイテンション、純粋なる演出の怖さで、見てる間何度も何度も鳥肌が立った。映像かっこいいし、ショッキングで、エキサイティングで、スリリング、めちゃめちゃ面白い映画やった! これは是非ともまた見たいですねー!
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