【青い地球をこの目で見るという壮大な夢】90点
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監督:平野陽三
製作国:日本
ジャンル:ドキュメンタリー
収録時間:89分
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素晴らしかったです。映像的な価値、撮影者の苦労を考えたらほぼ満点に近い映像作品です。日本の民間人としては史上2.3人目となるZOZOの元取締役の前澤友作と彼をサポートする撮影兼監督の平野陽三の、国際宇宙ステーション(ISS)での12日間の様子を集めたドキュメンタリー映画です。また、この2人は日本の民間人としてISSに行った初めての人物であり、同様にこれらの映像を撮影して映画化しているというのも日本初であります。あまり注目されていない今作ですが、極めて価値の高い作品だと感じます。
将来的には民間人の宇宙旅行も普通となる、と言われますが、まず僕は今作を見て一生宇宙にはいけないな、と思いました。いくら大金があっても、それだけでは宇宙になんて行けない、ということを徹底的に教えてくれた作品でした。前澤さんは2015年から宇宙に行く目標を立てていて、ロシアの宇宙訓練施設で長期にわたる訓練をしていきました。普通の人間ならば心が折れて、やっぱりやめておこう、と思えてしまうでしょう。そりゃあ、僕も宇宙に興味はありますが、ここまでして行きたいとは到底思わないです。余談ですが、僕は三半規管が本当に弱くて、グルグルバットを10回するだけでも吐き気をもよおすのに、作中で行われている高速回転なんてされたら死んでしまう自信しかありません笑 それだけでなく途轍もない重力に耐える訓練だの、飛行機の急上昇と急降下を繰り返す中での無重力訓練だの、あげだしたらキリがない。加えてもちろん宇宙空間に行くにはかなりの体力がないと厳しいようで、日々ランニングや筋トレもしないといけません。そのあたりはそこそこ自信はありますが、まあとにかく生半可な覚悟では到底宇宙に行けないということが今作でわかります。そのあたりの情報ってまだまだ世間では知られていませんから、極めて貴重な情報だと思います。
ところが前澤さんはポジティブで夢のある人でして、絶対に諦めないんです。その姿を見ると感動して涙が出てきそうになります。そしてその彼らを全力でサポートする周りの方々。後述しますが、ロシアの方々の親切なシーンが胸に刺さります。なぜなら今作のこの訓練シーンは、ロシアが戦争を始めるほんの直前のものであるからです。
さて、凄まじい訓練を乗り越えていよいよ前澤さんと平野さんは打ち上げの日を迎えます。ロケットの中は死ぬほど狭くて、閉所恐怖症の人は絶対乗れないでしょう。失敗したら確実に死ぬロケットの打ち上げ。見ている側にも相当な緊張が走りますが、なんとか打ち上げには成功します。
ISSの中の映像も充実しており、前澤さんは自費でここにきているため、自分のしたいことをしていきます。音楽を聴きながら窓の外の地球を眺めているシーンが印象的でした。自分も飛行機とかで綺麗な景色に出会ったらそうするからです。前澤さんは地球に帰ってから「宇宙に行って何か変わりましたか?」と死ぬほど聞かれてうんざりしたと言っていて、そんなに人はすぐ変わるものではないと呆れていました。しかし、変わるというか気づけたこともたくさんあったと思われます。それは、前澤さんが作中で言っていた「国の偉い人はここにくればいい」という発言からもわかります。確かに国のお偉いさんたちがこの地球をみたら、戦争なんて無意味だと思うかもしれません。人によって違いますが、やはり宇宙にいくことにより何か気付けるのだと思います。前澤さんも終盤で、確かに少し変わったかな、と言っていましたので、やはりその人にとっての新しい挑戦、というのは大なり小なりその人の考え方を変化させてくれるようです。
無事、地球に着いた前澤さん。世界が平和でありますように、と思っていた矢先、ロシアがウクライナに侵攻をしていきます。非常に歯がゆい結末ではあるのですが、映像越しでも構わないので、前澤さんのこの体験が世界に広がっていけば、少しでも世界平和に繋がるのではないかなと思います。
とにかく、自分にはかなり響いた作品でした。より一層、宇宙にはいけないな、とも思えてしまいましたが笑 こうやって、何事にも挑戦していく全ての人に敬意を示したいと思います。