◆あらすじ◆
黒人の小説家のモンクは純然たる小説の内容で勝負しているにもかかわらず、世間的なイメージの黒人を描いた小説の方が売れている現状を嘆いていた。ある日、モンクは皮肉交じりに世間的な黒人のイメージに迎合した小説を出版社へ送ったところ、それが爆発的にヒットし、実写化まで話が進んでしまう。
◆感想◆
裕福で知的な黒人の小説家のモンクが純文学で書いた小説より世間に迎合した小説が売れてしまい、モンクのなかで葛藤が生まれる姿を描いた作品であり、「貧困」「暴力」「白人による差別」といった黒人に対する無意識なイメージが社会一般に染み込んでいることを皮肉的にストーリーに織り込んでいる部分がクスっと笑えるものになっていました。
主人公のモンクは前述のとおり、裕福で知的な黒人男性で世間一般的な黒人のイメージとは違う人物として描かれており、本人もそれを自覚して世間的なイメージに合わせることを拒否していました。モンクは自分が知的であることを鼻にかける部分があって、自分の小説を理解しない世間を見下しているように感じました。そんな彼が世間に迎合する黒人の小説を冗談半分で出版社に送ると大ヒットしてしまったことで、彼の中で「こんな小説が売れるなんて」という葛藤が始まり、モンクの悔しい心情がしっかり伝わってきて楽しかったです。
世間が求めるものを提供することの是非について本作で描かれているが、モンクは人種に関係なく自分の小説を認めて欲しいという願望があり、黒人小説でヒットした女性作家は世間が求めるものを提供してヒットすることの何が悪いのかという気持ちがあり、別にどちらが正しいというものではないように思いました。世間に迎合せず世間から認められたいモンクの欲望が全て足を引っ張っているようにも思いました。
黒人小説の現状を皮肉一杯に描いた本作はそれまで知ることのできなかったことを知ることができて新鮮で面白かったです。私だったらとりあえず世間受けするヒット作でお金貯めてから自分の書きたい小説を書く道を選ぶなあ。そんな才能ないけど。
鑑賞日:2024年9月27日
鑑賞方法:Amazon Prime Video