茶一郎

異人たちの茶一郎のレビュー・感想・評価

異人たち(2023年製作の映画)
4.1
 「あなただけが孤独ではないよ」とそっと抱きしめてくれる感覚があり、鑑賞後、心が澄み渡った。原作を「ゴーストストーリー」ではなく、都市において孤独な男性の物語として、その「孤独」が極端に可視化されている。アンドリュー・ヘイ監督の個人的な物語としてのゲイ版『異人たちとの夏』。カムアウトが重要なモチーフになっていた。
 青色と赤色が際立ったテクニカラー撮影のような色使いも印象的。主人公が住んでいる高層マンションの窓からはビルと空しか見えず、彼が地上と天国との境目、彼岸にいるようだ。主人公が男性をそのマンションの上から見下ろすショットは、ヘイ監督の『ウィークエンド』の反復で、『ウィークエンド』の記憶も蘇りながら、この永遠に交わる事のない愛の物語に涙した。

【Podcast「映画世代断絶」で話しました】
茶一郎

茶一郎