むさじー

華岡青洲の妻のむさじーのネタバレレビュー・内容・結末

華岡青洲の妻(1967年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

<若尾対高峰、嫁姑バトルの愛憎心理劇が凄い>

嫁と姑の対立、そのプライドを賭けた情念の凄まじさが静かな火花となって伝わってくる。
息子可愛さの姑の感情は分かるのだが、嫁の心境の変化というのが興味深い。
憧れる女性に嫁と呼ばれたいが故に、会ったこともない男と結婚し、やっと結婚生活に入ったら夫を姑にとられそうで張り合い、夫の仕事のための献身競争で失明してしまう。
姑は嫁に嫉妬し、嫁は憧れていた女性の豹変ぶりに敵意を抱き、静かに対立が深まっていく。
高峰の凄味ある演技に、若尾の負けん気の強さも負けてはいない。まさに名演。
それに比べると、妻と母を犠牲にしながら青洲の苦悩はあまり伝わってこない。
仕事の成功のためなら見て見ぬ振りをする男の狡さ、したたかさが垣間見られ、演じる雷蔵のクールさもあって、一層際立っている。
原作に忠実にという、新藤兼人脚色の生真面目さもあるのだろうが、物語は淡々と展開していき、舞台やテレビドラマから抜け出していない。
(猫の動物実験のシーン以外は)増村らしいドロドロ感も薄く、特に後半は淡々とし過ぎていて感情移入しにくかった。
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