スローモーション男

アタラント号のスローモーション男のレビュー・感想・評価

アタラント号(1934年製作の映画)
5.0
 初のジャン・ヴィゴ作品鑑賞

25歳でフランス映画を席巻し、29歳という若さで亡くなったジャン・ヴィゴ監督。その遺作。

船乗りの新婚夫婦ジャンとジュリエットを乗せるアタラント号。田舎町から大都会パリへ出港!変わり者の老人ジュールと若い男、そして猫たちに囲まれながら旅立っていく。

美しい物語でとても好きになりました!
セーヌ川の優雅な流れに身を任せ、乗組員たちの喜怒哀楽が写し出される。
アコーディオンやホルマリン漬けの手、オルゴール、レコード盤。小道具が秀逸。

男女が離れていってしまう悲しさ
あの終盤で時代的に珍しいエロチックなモンタージュをやってのける。男女がベッドの上で会えない悲しさ。それがあの修復した蓄音機から流れる音楽に乗せて。
この映画、音響がとても効果的で素晴らしい!!!

そしてラストでは思いがけないほど感動的な結末が待っています。それもずっと退廃的な世界に反抗する精神を描いていたからこそ、多幸感のあるラストが作り出せたのだと感じる。

ジャン・ヴィゴは結核になりながらこの作品を作ったのは命がけで、ヒューマニズム、アナーキズムの傑作だと思います。

他のジャン・ヴィゴ作品も観たいです!

ps.最近、いいね少ない気がする…。