2人の花嫁の取り違え事件の顛末をコミカルに描きながら、女性はもっと強く賢くなろう、社会は女性の自由を受け入れよう…とスマートにさり気なく語りかけているようだ。そのくせ全く説教臭くない。物語を発掘したのは製作にも名を連ねるアーミル・カーン。脚本も本当によく出来ていて愉快で心地よいエンタメ作品として仕上がっている。多くのキャラクターの人物像に似合うマスクの俳優がキャスティングされていたのも見事。
台詞の端々にインドのナンセンスな慣習や社会通念が顔を出し、この地ではこの事件を解決することが側から見て思うほど簡単ではないのがしっかり分かる。
花嫁が取り違えられる決定的な場面はコミカルで尚且つ見事なほど自然な展開。更に取り違えられるままに別の花婿ディーパク(スパルシュ・シュリーワースタウ)に着いて行ってしまった花嫁ジャヤ(プラティバー・ランター)の謎めく行動やその理由。純粋で従順な花嫁プール(二ターンシー・ゴーエル)が屋台の女主人マンジュ(チャヤ・カダム)との生活を通して成長していく様や、悪徳警官マノハル(ラヴィ・キシャン)が大化けする姿など見どころも満載。大満足の秀作。
字幕翻訳は福永詩乃氏。特に翻訳が難しいはずの冗談の台詞が、よく熟れた日本語になっていて素晴らしい。