ベイビー

恋恋風塵(れんれんふうじん)のベイビーのレビュー・感想・評価

4.2
1960年代後半、とある山村で兄妹のように暮らしてきたアワンとアフン。当時村の生活は苦しく二人は中学を卒業したのち、台北で就職することに。

台北で社会に揉まれながら支え合う二人。やがて二人は互いに惹かれ合うのですが、二人で楽しみにしていたお盆の帰省のころ、アワンは国から兵役につけと言い渡されます…

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さすがは台湾ニューシネマを担ったホウ・シャオシェン監督の作品。初めてホウ・シャオシェン監督作品を拝見しましたが、構図が美しく、ストーリーの運び方がとても良かったと思います。

この作品の中では、発展途上の貧しさが色濃く出ていますが、ここに出て来る人たちは、いくら貧しくてもご飯は分け合いますし、月賦をしてでも誰かにプレゼントを贈ったりしています。決して心が貧しいわけではありません。人と人とが支え合うことで、貧しくても"なんとかなる"という希望が見えてくるようです。

そのような優しさは画面から溢れています。光や色彩、美しい自然や余韻を残す間の取り方とか…

ホウ・シャオシェン監督は小津安二郎監督を敬愛していたということもあって、なるほど、それらしい構図もちらほら見受けられますが、作品の完成度を見ますと、これがホウ・シャオシェン監督オリジナルのスタイルなんでしょうね。

特にオープニングのトンネルのシーンは印象深く、アワンとアフンのファーストカットの力強さと共に、のちに出てくる二つのトンネルの伏線にもなっているのですから見事な演出です。(*この三つのトンネルに対する僕の解釈はコメント欄に入れておきます。)

とにかく台湾の風景が美しい。この風景は30年以上昔のものなので、今では見る影もないと思いますが、それにしてもラストカットの風景が美し過ぎます。(*このラストカットの解釈も書いておきます。)

エドワード・ヤン監督に続き、また素晴らしい監督に出会うことができました。これからもドンドン台湾ニューシネマの発掘をしていきたいと思います。
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