Jun潤

ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命のJun潤のレビュー・感想・評価

3.8
2024.07.23

予告を見て気になった作品。
主演はアンソニー・ホプキンス。

1987年、イギリス。
外から物を持ってきては家に置き、全然捨てられずにいるニコラス・ウィントン。
妻に言われて片付けを始めたニコラスは、引き出しの中からスクラップファイルを取り出す。
その中には、1938年の第二次世界大戦直前、ドイツのチェコ進攻によって難民となり、イギリスから探し出した里親や身元引受人に引き渡してきた子ども達の姿が納められていた。
ニコラスは、当時のことを追想するー。

これまでにも戦争を描いた伝記ものを観てきましたが、こんな人もいたんですね。
そして今作は単なる伝記ものでは完結しておらず、当事者本人が自分で過去のことを追想し、自分が行ったことに対する後悔と救いが描かれていました。

戦時中はこの後世界や情勢がどうなるのかが全く分からない状態で、ただひたすらに自分のできることをやっているだけだったのかもしれませんが、戦争を生き抜き、自分がしたことの意味について考え直してみると、意味は無かったのかもしれない、救えたはずの命がもっとたくさんあったと、いくら悔やんでも悔やみきれないという人は、ニコラスだけでなくたくさんいたのかもしれませんね。
だからこそ、救えなかった命と同じぐらいの救えた命、救えた子どもたちが現代まで命のバトンをつなぎ、ニコラスと再会して、彼の偉業を後世まで語り継いでくれるというのは、本当に奇跡みたいなことなんだろうなと思います。

さて、この手の作品だといくらストーリー上でハッピーエンドに見せたところで、ミドルクレジットに出るその後の話で突き落としてくるのはいつものこと。
しかし今作、たしかにニコラスと協力して多くの子どもたちを救った同僚たちが強制収容所に収監されてしまったという悲しい事実もありましたが、実際にニコラスに救われた子どもたち、そのさらに子どもや孫たちが、今作に出演してくれたという、一つの映画作品としても、史実を後世に語り継いでいくという意味でも、とても救いのある鑑賞後感に仕上がっていました。
Jun潤

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