刑務所内で実際に行われている舞台演劇による更生プログラムを題材にした作品。誰かを演じるという行為は、自身に対する思い込みからの解放や、新たな自分の姿を模索するきっかけになるだろうし、更生プログラムとして既に実績を上げているというのも頷ける話である。
更に本作では大半の囚人役を、実際にプログラムに参加した経験を持つメンバーが演じており、社会復帰のきっかけとして芸を会得した事から、こうして社会貢献に繋がる道を提示している点でも意義深い。
議論の末にメンバーが選んだのは喜劇だったのだが、非常に残念なのは実際の演劇がどのようなものなのか殆ど描かれていない事。当然、本作の出演者は演技しているはずなので、彼らがプログラムで会得したスキルを披露しているはずなのだが、作品の構成上、メイキングのドキュメンタリーを見ている感覚しか得られず、本作自体にはコメディの要素は殆ど見当たらない。
エンドロールでは彼らが実際に舞台で演じた際の様子が流れるのだが、そこが最大の見所だった。それを本編に上手く盛り込めなかったのかと思う。