ヒノモト

ありふれた教室のヒノモトのレビュー・感想・評価

ありふれた教室(2023年製作の映画)
4.1
若手教師のカーラが新たな赴任先の中学校で起きた盗難事故に担当クラスの生徒が疑われる。独自に犯人捜しをするために、自身のPCカメラで職員室の光景を撮影した映像に、ある人物が盗みを働く瞬間が映し出され、その後の学校側の対応により保護者、生徒たちからの反感を食う形となるというお話。

観た直後は、解決しないモヤモヤした気持ちのまま帰宅したのですが、日を追うごとに今作の良さに気づきました。

全編を通して、フラットな目線で描かれていて、主人公の教師をカメラは追い続けるものの決してその境遇の辛さを応援したくなるようなシナリオになっておらず、だからといって、保護者や生徒たちの行動や言動を卑下する流れでもないため、学校のシステムというものを引いた形で観た時に、答えの出ない問題に言語化しにくい後味を残し、少し現実離れしたラストシーンに戸惑いつつも、誰のための学校であるのかを象徴しているとも言えて、落とし所としては腑に落ちる感覚は残りました。

ゴシップ雑誌のような学校新聞やドイツの教育システムに違和感はありましたが、逆説的なタイトルの美しさも含めて、単なる教師の大変さを浮き彫りにするだけに留まらず、複雑な思いを抱かせることに成功している作りに感銘を受けました。
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