ショウジ

アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家のショウジのレビュー・感想・評価

3.6
現代芸術習ったはずなのに、アンゼルム・キーファーは名前も作品も聞き覚えがなかったのだけれど、ヴィム・ヴェンダースが撮るドキュメンタリーが好きなので観に行った。
作品のデカさ、アトリエの広大さにビビった…
平面作品が並んでいる場所が映し出され、これくらいの大きさかな?と思っているところにアンゼルムが平面作品を運んできて、人間との大きさの比較がされ、その大きさにびっくりする、なんとも見事な演出…
ああいう巨大な作品作ってる人って逆にどうやって稼いでいるのかわからない。個展だけではどうにもならなそうだし、個人所有用に小さめの作品とかも作ってるのか?写真集とかで稼いでいるのか?とか色々考えてしまった。

ナチスが存在しなければポール・ツェランの詩も存在しなかった可能性があり、その詩に影響を受けたアンゼルムの作品も生まれなかったかもしれず、アンゼルム自身が「自分は反ファシズムとは言えない」「自ら名乗ることは反ファシズムの人たちに失礼だと思う」といった趣旨のことを言うに留める気持ちもわかった。ナチス自体や、ナチスの被害にあった人たちに着想を得て作品を作っているのだから…自らそういうところに身を投じて作っている時点でかなり勇気があるし、彼の作品には存在意義があると思う。
ただ、作品が陰鬱な空気を展示空間全体に放出していて、私は実際に観たくはないな…とは思った。どうしようもなく暗い気持ちになりそうで。
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