♪ 不便よ 不便よ 不便よ 不便よ
私の可愛げは
そんなことをのたまう私は一級品
敬いなさい
アナ・ケンドリック初監督作品。
そんな謳い文句に惹かれて鑑賞しましたが…かなり気持ち悪いサスペンスでした。正直なところ、監督第一作目として相応しい選択とは思えません…が。
想像以上に面白い作品だったのも事実。
実話が主体なので“生々しさ”は際立ちますし、それでいて主人公は分かりやすい造形。この辺りのバランスは初監督作品とは思えないくらいに見事でした。
基本的には真面目な御方なんでしょう。
事件に真正面から向き合い、問題点を抉り出そうとする姿勢が十分に伝わってくるんです。
ゆえに気持ち悪いんですけどね。
実在した連続殺人犯の異様な雰囲気を包み隠さず、むしろ増幅するように描いているので、真摯な筆致だけに足元が崩れそうな気持ちになっちゃうんです。
しかも、時系列はパズルの如くバラバラ。
なので観客側が組み立てないといけないんです。そして、その行為が物語側に惹き込む手助けをしているんですね。この辺りも初監督作品とは思えない選択。かなり挑戦的です。
ただ、その反面。
真面目なので角が立ち過ぎて息苦しさが先立つ部分もあります。鑑賞し終えて「それは必要だったのか」と言いたくなる場面もあり、自己主張と娯楽性のバランスを取るのは難しいな、と思いました。
思うに、映画って“あそび”が大切なんでしょう。
「意図を十全に伝えたい」と監督さんが思ったとしても、その解釈は観客に委ねるが吉。そういう意味では本作の方向性は分かりやすいです。初心者向けかもしれませんね。
まあ、そんなわけで。
連続殺人犯がテレビ番組に出ていた…という衝撃の事実を中心として描かれたフェミニズム系サスペンス。ネトフリオリジナルなので間口は広くないし、完成度が高いわけじゃあないんですが、百聞は一見に如かず。試してみることをオススメします。