ノラネコの呑んで観るシネマ

台北アフタースクール/成功補習班のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

4.7
1994年の台北。
予備校「成功補習班」で出会った、一人の教師と四人の生徒たちの、四半世紀にわたる恋と友情の物語。
お調子者ジェンハンと、家庭の事情でジェンハンの家で暮らすシャン、校長の息子の通称和尚、クラスのマドンナのチェン・スー、そして新任の英語教師で、ドキュメンタリー映画を撮っているシャオジー先生。
監督のラン・ジェンロンが、自らの青春時代と恩師の思い出をモチーフにした自伝的作品。
物語の序盤は、ジェンハンのチェン・スーへの恋心を軸とした、割と良くあるコミカルなストーリー。
だが中盤以降、それぞれの登場人物の性的志向が紐解かれて行くと、おちゃらけだけではない、実に深い青春の葛藤が描かれてゆく。
台湾はこの数年前に戒厳令が解除されて、民主化されたばかり。
社会が自由になると、よりパーソナルな問題に目を向けられる様になる。
今よりも遥かに、性的マイノリティに対する風当たりが強かった時代、悶々とする行き場のない想いを抱えた若者たちにとって、すでに生き方の覚悟を決めたジャオジー先生が、人生を切り開くメンターとなる。
人生で何より大切なのは、自由と恋!
2018年の現在の喪失を起点に、過去を振り返ってゆく手法は藤井道人の「青春18×2」を彷彿とさせる。
テーマ曲のレスリー・チャン版「モニカ」や飯島愛の写真集など、同時代感が強烈に刺さる。
しかし「流麻溝十五号」と「台北アフタースクール」を連続して観ると、40年間の社会の変化が実に感慨深い。
台湾がなぜ民主化出来たのか、なぜ東アジアで一番LGBTQに理解があるのか。
両作を観るとしっくりする。
その意味で、どっちも台湾現代史をしっかり捉えている。
ブログ記事:
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