Kamiyo

バッテリーのKamiyoのレビュー・感想・評価

バッテリー(2006年製作の映画)
3.8
2007年 ”バッテリー” 監督 滝田洋二郎
原作は”あさのあつこ”女性が書いたもので
さらに児童文学という事にびっくりした
試合の勝敗など問題ではない。
スポーツを通して瞬間、瞬間を積み重ねて生きていく。
その姿が林遣都の肉体を通して説得力を持って映像化された。

さわやかさではナンバーワン。
端正な演出で、高揚感を煽るわけではないので、
青春映画にありがちなくさいものがない。
野球をキーにして人間関係が様々に描かれる。
そのひとつひとつが実にリアルだ。
そして、セリフがなかなかいい。
「野球はやらせてもらうのではなく、やるものだ」
「野球は心を伝える競技だ」
これらのセリフは、野球だけのものではないのでは
なく、すべてにあてはまるのではなかろうか。
社会への発言も、政治への参加ももっとひとりひとり
がやるものであろう。

高い能力がありながらそれをもてあましている
主人公原田巧(林遣都) とその家族との人間関係
あるいは綺麗な田舎の風景とその地域の人々との関係。
原田巧の性格と能力と幼さがもたらす友情や摩擦。

野球部の監督戸村(萩原聖人) に髪を切って坊主にしろと言われ
「髪を切れば少しでも球が速くなるんですか」と言い返す
原田巧の性格がいい。
彼には野球しかないしそのためにまっすぐひねくれている。
個人的に僕もそのような性格の少年が好きです。

豪速球を武器に自信満々の原田巧に、
迎えるのが天才投手”巧”の剛球を受けることのできる
唯一の捕手”永倉豪”(山田健太)ですね。
性格が破たんしている”巧”を見事に支える捕手。
バッテリーというタイトルからも、
そのことはだれもが分かることなので
この二人の関係がどのように変化するのかが
この映画のポイントとなるわけです。
紆余曲折がありながら
たった1球の剛球を投げるためにバッテリーは友情を強めます。
永倉豪が、ドカベン並みの笑顔で呟く。
「巧、お前、連打されたことないんじゃろ?
ノーアウト満塁なんてピンチ、経験したことないんじゃろ?
お前、きっと、ピンチに弱いで」

最後に選んだのは、岸谷五朗さん扮する、巧のお父さん。
息子の夢中な野球を理解するため、職場の野球チームに入って経験。
なかなか理解を示さない母親天海祐希 に興奮して話すシーン。
「生まれて初めて(野球を)やって大発見(があったんだ)。
野球って、気持ちを伝えるスポーツなんだよ。
自分の気持ち、仲間に伝えたい、仲間の気持ち、もっと知りたい。
そんな思いがプレーに出ると、本当に楽しくて・・。
楽しくて楽しくて、たまらなくなる」と。
そのことを本来は最も理解しなければならない母親に「野球は心を伝えるスポーツなんだ」と諭す父親(岸谷五朗)
私の好きなスポーツも野球だから、この感覚、わかる気がする。
今、若者に人気のサッカーも、同じだろうか。

”巧”の祖父(菅原文太)が「体の成長に心がついて行けないのだ」
中学生時代というのは、ほんとに微妙な時期です。
大人ぶりたいのに、まだまだ子供だし、身体と精神のバランスも悪いし、自分が何に向いているのかもわからないし、とにかく、
親やまわりの大人には、理由もなくイライラするし・・・・反抗期です
僕も経験あり自分のこととそして息子と娘に

所々泣けた。入院している弟にボールを渡す場面。
試合に初め母親が応援しに来た場面。
クライマックスで母親がスタンドに現れるシーンが一番好きです。
口では強がったり、気のないことを言ったりしていても、
実は子どもは心の中では自分が頑張っている姿を
母親に認めてもらいたいと、いつも願っていると思うからです。
観客席で大きく手を振る母親の姿は、
巧にとって百万の援軍を得たようなものだったでしょう。

三着の大きさの違うユニフォームを使った幕切れは
ちょっときれいにまとめ過ぎたかも知れません
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