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清作の妻の小のレビュー・感想・評価

清作の妻(1965年製作の映画)
4.2
角川シネマ新宿で開催の溝口健二・増村保造映画祭─変貌する女たち─にて鑑賞。

日清、日露戦争の時代。病身の父を抱えた一家の生計を支えるため、60歳を超える老人の妾となったお兼。老人が亡くなり遺言通り大金を手にすると、母・お牧の強い希望で逃げるように離れた村へと帰る。

村八分同然の生活に日々やさぐれて暮らすお兼だったが、母の急病と葬式の際、親切に世話をしてくれた村一番の模範青年、清作と愛し合うようになる。やがて二人は、村民の冷たい視線の中、結婚し幸せな日々を送る。

そんな折、日露戦争が勃発し、清作が徴兵される。名誉の負傷で、いったんは送還された清作だったが、傷が癒えると再び出征することになる。そして、村民が期待する名誉の戦死で、模範青年のまま一生を終えようとすることに満足そうな清作。お兼の心境やいかに。

空気を読むことが大好きで、滅私奉公に自分の価値を見いだす清作と、空気を読むって何?とばかりに、自らの幸福を追求するお兼。

対象的な二人の姿を描くことで、戦争に突っ走った日本人のメンタリティと、「近代的人間像」を突きつける。

そして衝撃的な展開で、燃えさかる愛の一途さが相手に選択肢を失わせ、けれども、相手は失ってはじめて見えてくるものがあることを物語る。

深いイイことを2つも盛り込むこの物語、なかなかの名作ではないかと。

それにしても清作は何故、皆が見捨てる村のつまはじき者、お兼の世話をしたのか。模範青年らしくもない…。

いやいやあれほどのクールビューティーですよ。模範青年といえども空気が読めなくても仕方ありますまい。愛は盲目。
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