ピロシキ

東京物語 4Kデジタル修復版のピロシキのレビュー・感想・評価

東京物語 4Kデジタル修復版(1953年製作の映画)
4.8
「もっと年取ったら絶対沁みる」とか言ってた10年前の自分! よっしゃその通りや! なおかつ「4K上映」というナウい援護射撃にもやられ、“終”の直後しばし立ち上がれず呆然となったまである。

くしくも英語字幕付き上映だったので、元々の台詞における「余白」がいかに効いていたかハッとさせられる。“じゃあ...お姉さん...あたし...”が“I have to go.“とハッキリ訳されるなんて...この脚本の奥ゆかしさを、日本語話者以外にもうまく伝えられたなら。

そう、なぜこんなにも心が動くのか、本当に伝えづらい作品である。ただ、これが海外にも受けられ今でも名作と見なされているのはきっと、誰しもにとって普遍的な「家族」についての話だから。

家族のかたちが変容していくこと。東京に住む息子や娘はみな働き、日々の営みを確立していること(特に「強い女性」の姿は溝口作品に通じるものを感じる)。そして、戦地で夫を亡くした紀子さんが「あの人のことを何日も忘れて過ごしているのに気づくことがある」と、自らを責めるように義父に話し「あなたは息子のことを忘れて幸せになってください」と諭されること。これらは、戦後長らく経っていない1953年の日本が、ここから復興し変化していく瞬間そのものだったのだろう。小津安二郎は、それを批判も美化もせず、ごく自然なものとして淡々と切り取る。

ただ一つ、おそらく監督の心情が乗った言葉があるなら、あれでしょう。

「生きているうちに、もっと優しくしておけばよかった」

時代が移り変わっても絶対に忘れるべきでないものは、多くは語られない。全てこの言葉に尽きると思う。そして、今から10年経ってこれを見直すときにはきっと、また違った印象を抱くことになる。きっとそうなる。

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