凄く観たかった作品、偶然札幌に行く用事ができたので観れました…!凄かった。泣けてきてしょうがなかったのだけれど、途中から、これは私ごときが泣くなんて杏におこがましいのではないか、という気持ちになってしまい…でも、最後はやっぱり泣いてしまった。
個人的に一番泣けたのは、「給」の字を教えて貰う所。
後から思い返しても、いや、後から思い返せば余計に、そこが一番印象に残った。
ただ、学びたかっただけなのに。
ただ、普通に生活したかっただけなのに…
そんな「人」としての権利が奪われるって、どうなんだろう…
凄く幸せなシーンなのに、凄く悲しかった。
今思い返しても泣けてくる。
河合優実ちゃんの演技が凄かった。
というか、役作り(かな?)が凄かった。
唇がカサカサだった。
体調って、唇に出ますよね…?女性なら余計わかると思います。
ビジュアルではそれが一番印象に残った。
変な言い方だけど、これは演技が超上手い若手の女性役者さん(河合優実ちゃんはまさにその代表例だと思う。本作も、ずっと喋らずに演技をしているシーンが物凄くある。喋らないで演技できる(ちゃんと観客に伝わる)のは上手い証拠だと私は思っている。勿論演出もあるが…でも本作は相手が居ないシーンで長時間演技しているのでほんとに凄いと思った。…という前フリが長くなったが、)その役者さんの力が最大限に活きる役どころだと思ったが(事務所が製作の主導っぽいので。彼女と監督は同じ事務所ですし、製作の木下グループ傘下です)、逆に、男性の若い役者さんの場合、どういう役柄だとその能力が最大限に発揮できる作品になるんだろう…と、ちょっと考えてしまった。ほんと変な言い方ですが、それくらい、若い女性ということを活かしている役ではあったと思う。別に脱ぐシーンとかがある訳じゃなくて、立場の弱さとか、色々な意味で。
佐藤二郎さんは特に苦手って訳ではないんですが、どうしても面白系に見えてしまって…(笑)でも邦画好きの方ならこのキャスティングは「さがす」からだろうな!って思いますよね?私は完全に思った一人です。そして、まんまと見事に嵌められました…本作、非常に合っていたと思います。個人的には「さがす」よりもよかったかもです。
稲垣さんも私は可もなく不可もなくですが、役どころが合っていました。ああいう飄々とした感じが似合いますね。
そして特筆しておきたいのが、吉岡睦雄さん!
序盤で佐藤さんと話をしている刑事さんです。
うおー吉岡さん!!とテンション上がりました。
観れていないんですけど、黒沢清監督のroadstead(配信プラットフォーム、権利買い切り)の作品「Chime」で主演をされている方です。最近気になっている方で、めっちゃ観たいんですよね…!
かなり脇役として鳴らしている方だと思うんですが、本作も絶妙でした…凄く意味がある役です。
ストーリー的には、誰もに非があり、誰もに非がない、という構成がめちゃくちゃよかったです。いわゆる善人も悪人も居ない(ただしお母さん除く)。その時の精一杯を皆生きてる。(そういう意味では河合優実ちゃんが出てた「由宇子の天秤」が少し浮かびました)
それは結果論であるが、最後に稲垣さんが言っていた事、誰しもが思うだろう…
(以下ちょっとネタバレ挟みます)
コロナが出てきたり、赤ちゃんが出てきた時には「えっ!そっち方向へ行くの!?」と思いましたが、凄く意味があったし完璧に繋がっていた。
特に赤ちゃん、あり得なくはない…
傍から見れば「なんちゅー迷惑なことを!!」と思いましたが、まさに多々羅が言っていた「打ち込めるもの」彼女にはそれが必要だった。
誰かにとってはマイナスであることも、誰かにとってはプラスになる。お互いさま、ともまた違うんだけど、(持ちつ持たれつ、でもないしな、)そんな世の中のパワーバランスというか、上手く自然の力が作用してこの世の中は回っているんだ…ということを絶妙に表現していて、素晴らしかったと思います。
制作はコギトワークスさん。元々好きな制作会社さんで(生っぽい感じとかエモーショナルな感じがお得意な会社だと思います)、最近鈍牛倶楽部、というか木下グループ(キノフィルムズ)のお仕事たくさん請けられてますが、相性良いと思います。
実話ベース(着想を得た、だったかな?)と最初に出て、どこまでがそうなんだろう…とちょっと気になりましたが(調べましたが具体的には出てないみたいですね。でも骨格はきっとそうなんだと思う。中盤までとラストは多分そう?)、構成が凄くよかったです。入江悠監督は私はちょこちょこ観てる程度で詳しくはないのですが「ギャングース」が好きで、毛色はちょっと違いますが、あの時の興奮に近いものを感じました。(今、自分のレビューを振り返って気付いたのですが、あちらには「さがす」の伊東蒼ちゃんが出てましたね!繋がりました^^)次回作も楽しみにしています!