桜子

パーマネント・バケーションの桜子のレビュー・感想・評価

3.9
permanent vacation、"終わりなき休暇"。ジャームッシュが創作欲の衝動に駆られ、卒業制作として発表した16ミリのデビュー作。

ロートレアモンを読み、チャーリー・パーカーを好み、古いレコードを聴く青年。社会性とは無縁の彼は当てもなく街を漂流する。人間の生死や孤独について考えを巡らせる。点と点を移動し続ける、漂流の動機は常人には理解して貰えない。何故なら彼は根っからの放浪者だから。彼が出逢う人々もまた同じ様に社会のアウトサイダーであり、噛み合っているようないないような言葉を交わして、一切の名残も無く別れていく。ベトナム戦争が静かに駆り立てた彼らの諦観や狂気がニューヨークの裏通りに漂って、酷く退廃的な空気を醸し出している。

言ってしまえば、ただ厭世観の下に若者が街をふらふらと彷徨う、それだけの物語なのだけれど、ジャームッシュらしい淡白さとアーティスティックな画面、独特の間合いの中に荒削りなメッセージ性が青々しく見えて私は凄く好きだった。途中の映画館で上映されていたのはニコラス・レイ『バレン』(1960)だそう。未鑑賞。
多分もう一度観ると思う。

配給:フランス映画社
桜子

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