ざぁ

コンテイジョンのざぁのレビュー・感想・評価

コンテイジョン(2011年製作の映画)
3.0
緊迫感の描き方は、さすがソダーバーグ一流のところがある。しかし風呂敷を広げ過ぎて現実味を欠いたきらい。しかも落とし所も不明瞭でもったいない、散らかしっぱなしムービー。その意味でも「トラフィック」のパンデミック版。
むろん観るコチラが、言わば《小説より奇》なる半パンデミック生活を送りすぎて、なまじっか耳年増になり過ぎてしまっているから、という事情もあるが。

CDCやWHOが世界の警察ならぬ世界の保健委員かのように描かれているのは、やや戯画的に映る。むろん一昔以上も前の「アウトブレイク」などと比べれば格段のリアリティで疫学研究の政治性を取り扱っているのは、確かにソダーバーグ的な着眼点。
ただ、そのCDCの内部的なスキャンダルを即ち組織的な崩壊として描く手法は、ちょっと紙芝居がかかってしまう。しかも議会で証言を求められる《ヤラカシ主》の扱いが半端。一寸のヤラカシ主にも五分の魂、的な温情なのかアンビヴァレンツなのか、断罪感も愛着も許さないあたりの煮え切らなさが消化不良の感を招く。

同様に紙芝居じみるのが、WHOの研究者が単身でヒロイックに活躍&遭難するプロット。ちょっぴり《インターポールの銭形警部》に似た浅はかさを感じる。空港での決断と疾走も、ちょっと理想化が過ぎるかな。
第一、中国国内に恐らくほとんど大した土地勘もない彼女が、義憤に駆られて踵を返してみたはいいけれど、どこへ向かって誰を助けに行けばいいのか、果たして理解しているのかしらん?というあたりの描き方が浅はかで興を削がれた。

何よりも不明瞭なのは、陰謀論者でジャーナリスト気取りのブロガーに対するソダーバーグの肩入れぶり。むろん、まだ「インフルエンサー」の語が流行する前の作品としては、その影響力の描き出し方は特筆に値するかもしれない。
けれどソダーバーグのエートスが煮え切らず《もっと陰謀論にも真剣に向き合えよ》なのか《にわかジャーナリストもどきに耳なんか貸すなよ》なのかで揺れながら映像にしてしまった感。大袈裟すぎる防護服姿の戯画的な不釣り合いさに結実している。
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