ノラネコの呑んで観るシネマ

マンガ家、堀マモルのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

マンガ家、堀マモル(2024年製作の映画)
4.3
漫画の新人賞をとってから、描くべきテーマが見つからないマモルの部屋に、小、中、高校生の三人のゴーストが現れ、彼らの過去を漫画にしろと言う。
懸命に働く母へ、さびしいと言えなかったこと。
将来の道を開いてくれた恩師に、お礼を言えなかったこと。
実際には伝えられなかった、彼らの想いを漫画にしてゆくうちに、やがてマモル自身も、向き合わねばならない過去があることに気付く。
三人のゴーストが出てきた時点で、これが「クリスマス・キャロル」をアレンジした物語であることは分かる。
だがこの映画、中盤にある仕掛けがしてあって、序盤に元ネタがある分、そこからの展開はなかなかフレッシュだった。
これは序盤で明かされるのでネタバレではないと思うが、主人公は今は亡き人物と過去にコンビで漫画を描いていて、コンビ解消に至る出来事をまだ整理できてないのだ。
この展開は「ルックバック」にも通じる部分があるが、こちらはファンタジー色が強く、いい意味で優しい。
ショパンの別れの曲が重要な意味を持つのは「さびしんぼう」を思い出したが、なるほど昭和の大林テイストっぽさもある。
ところで、本作は監督が三人もクレジットされていて、鑑賞する前は三人のゴースの話を、オムニバス的に描くのかと思ったら全く違った。
長編一本に監督二人は割とあるけど、三人は珍しい。
一体どう言う風に役割分担していたのだろう?