馮美梅

ディア・ファミリーの馮美梅のレビュー・感想・評価

ディア・ファミリー(2024年製作の映画)
4.0
史実を元に作られた今作品。
この主人公がもし生きていたら自分と同じような年齢になっていたんだなぁと思ったりしながら、その時代時代の風景も楽しみました。

夫婦で観に行ったんだけれど、ご隠居さんが隣で鼻水ズビズビしておりましたし、館内のいたるところで同じように泣いている方たちがいました。
「まさか大泉洋さんに泣かされるとは…」そういう感想を言うの人は多そうです(笑)

確かに理不尽だったり、不条理だったり、辛い思いを沢山されたと思うんだけど、それでも家族みんなが次女の佳美(よしみ)さんを大切に思い、彼女も自分の為に家族が頑張っていることをちゃんと理解している。

生まれつきの心臓疾患を持っている佳美さんは余命10年と主治医から宣告されることに。彼女を救う唯一の手立ては人工心臓ができること。

しかし、今現在も人工心臓は出来ていない。この家族はただ悲観に暮れるだけではなく、佳美さんの為に人工心臓を作ろうと大学病院や会社を巻き込み突き進んでいく。

しかし、色々思うようにはいかない。いつしか時間もお金も流れ流れていく。そして一緒に頑張ってくれた大学の先生たちもそれぞれの進むべき道へと向かいって行った。

絶望しかないと思ったその時、ふと1人の医師の事言葉を思い出した。
人工心臓は無理だとしても、外国産のカテーテルではなく、日本人に合うバルーンカテーテルを作ったら、医療過誤で亡くなる人も少なくなるだろうし、助かる人も増えるのではないかと。

迷う父に佳美さんが後を押す。自分は大丈夫だからバルーンカテーテルを作ってほしいそれで沢山の人が助かることが自分の夢でもあると。その言葉に励まされ奮起してバルーンカテーテルを作る。

大学教授も一見すると嫌な奴に思えるけれど、でも彼も彼なりに難しい立場だったのだろう。大学の派閥医学会のいろんな難しいことも垣間見ることができた。

別れ別れになった先生たちも、坪井さんが作るバルーンカテーテルに希望を見出しているが、なかなか実用化にはハードルがあったのだが…

確かにお涙頂戴の作品と言われたらそれまでだけど、実際、それで今そのバルーンカテーテルで助かった命があるんだし、なにより、家族が佳美さんのいるところでは底抜けに笑顔で温かかった。

お母さんも普通だったら旦那さんの無謀な挑戦に対して反対してもおかしくないんだろうけど「それじゃ私たちは何をしたらいい?」とそんな父と母の娘だからそこって思ったし、だからこそ長女がふと1人になった時に自分の感情をさらけ出し涙するシーンはグッときました。

世の中、突然の病などでいろんな父と母はわが子の為に頑張って奇跡を起こしている話があるけれど、本当にこの作品もきっと映画よりも何倍も、いや何百倍も辛くて大変な日々を過ごしてきたんだろうなと思いました。

涙は出るけれど、観た後はなんだか心晴れるような気持ちになれる作品でした。
馮美梅

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