構成がちょっと残念。
今作は、実話をもとにしているということを前提に、まずはこのような大偉業を後ろ盾一つなく成し遂げた「筒井宣政(作中の姓は坪井)」さんには敬意を表するとともに、それを結実するに至らしめた家族への愛には敬服するほかにはない。
その事実だけで、この作品が低評価になることはどう転んでもないのだが、そのうえであえて言わせてもらうと個人的には少し残念さが残る作品でもあった。
まず、今作は「バルーンカテーテル」誕生の裏にあった”家族の絆”にスポットを当てた物語となっている。
そう、今作のメインはあくまで家族愛となっている点。
ここが、個人的には残念に感じるポイントとなってしまった。
なぜかというと、小さな町工場を営む宣政には、先天的な心臓疾患を持った娘の「佳美」がおり、その佳美に余命10年が宣告されたことをきっかけに「人工心臓」の開発へと乗り出すことになるのだが、家族描写に比重を乗せているあまり、正直言って今作はこの困難極まりないミッションに対する道程の描きこみがいまいち甘いのだ。
資金的な困難、理解者を得られない困難、技術的な困難、それらを物語るシーンは確かにあったし、それらを無く今作は当然語れないのだが、尺的な問題なのかなんなのか、それらがいやにあっさりと説明されているような感覚が拭えなかった。
1970年代での人工心臓の研究という字面だけで、莫大な研究資金が必要であることは容易に想像がつきすぎるし、医療関係者でもなんでもない宣政が知識ゼロでそれを行うことに賛同が得られなかったことも同様である。
ましてや、その研究の当事者たちが口をそろえて10年以内での実用化は不可能と言っている事からも、実現がどれだけ現実的ではなかったかは火を見るより明らかな筈である。
しかしだ、今作のそれらの表現ははっきり言ってかなり上っ面というか、あまりにも美化しすぎているように感じる出来であったのだ。
実際はもっと過酷で凄絶であったであろうことが、これが実話であるからこそ、上っ面な表現でもそれは理解できるからこそ、そこが辛かった。
フィクションなら逆に真実よりももっと過剰でもよかった。
そのくらい、バルーンカテーテルが生まれるまでに起こった困難は、本来はもっと筆舌に尽くしがたいものだった事を察してしまう。
この作品に、どこかのアイドルの誰かは出演していないのだが、そういう所になんかアイドル映画っぽさを感じ、本編で泣くには至らなかった。
そして、号泣必死という話を聞いていた分、そこが物足りなさとなってしまったのは否めないところ。