2024.07.26
浜辺美波主演。
『翔んで埼玉』シリーズは未視聴のため、久しぶりの武内秀樹監督作品。
予告の時点でテンションが高い感じは伝わってきますが、もしも歴史上の偉人たちが現代日本の政治に携わったらという、トンチキ歴史SFな感じで、一つの時代、一人の偉人だけならまだしも色んな時代から色んな偉人が集まってくるという、果たしてどう収集をつけるのか、鑑賞前の時点ではどんな作品になるのか良くも悪くも全く読めませんね。
新型コロナウイルスの大流行により、内閣総理大臣が急死した日本。
社会や経済が大きく混乱する中、政府が実行したのは、最新AI技術によって現代に歴史上の偉人たちを再現し、新たな内閣を組織することだった。
徳川家康、豊臣秀吉、織田信長、坂本龍馬など、各時代の偉人たちは、現代の常識に捕らわれることなく次々に新たな政策を推し進めていく。
そんな偉人たちの活躍に日本中が熱狂する中、テレビ局の社会部記者である西村は坂本龍馬に近付きスクープを狙っていくが、この偉人内閣にはとある陰謀が仕組まれたー。
『もしも徳川家康が総理大臣になったら』ってより「もしも令和が戦国時代になったら」では??
てぐらい徳川家康の影は薄い。
なんなら坂本龍馬もそうだし、浜辺はもう少し前に出てきて欲しかった。
今作に登場する偉人たちは、なろう的な転生やSF的なタイムスリップではなく、あくまでAIによって再現された存在。
なので実際どんな人物だったのかとか、どういう背景があって歴史の流れに飛び込んだのかとかは描きようがなく、あくまで歴史研究の末蓄積されたデータから生まれた存在という、偶像的なキャラ付けになっていたのは、ストーリーの流れ的には良かったと思います。
しかしその設定もあまり定着していなかったというか、ちょいちょい各偉人の人格的な部分も出てきていて、終盤はそれがメインになってくるものだから、作品のジャンルとしては政治作品として深くしようがないのも分かるものの、かといってコメディに振っているかと言われるとそうでもないという、中途半端な仕上がりに感じてしまいました。
予告の感じだと、大きく期待されるのは時代の異なる偉人たちが現代に集まり、アベンジャーズのようにそれぞれが好き勝手やった結果日本の政治が良い方向に向かっていくのではと歓喜させるストーリーか、自身が生きていた時代と現代との齟齬に戸惑いを感じつつもかつて成した偉業が現代でも成し遂げられるとどうなるのか的なIFストーリーも期待できそうでしたが、上述の設定だとやはり戦国武将たちが令和に舞台を変えて天下取り合戦を行っていくものにしかなりませんよねって感じでした。
大河ドラマレベルの歴史考証が不要なコスパの良さはありそうでしたが、ただでさえ大河ドラマや最近の時代劇映画で戦国時代が使い倒されているのだから、派手な目新しさはそこまで無かったように思います。
それが顕著に現れていたのは三英傑以外の偉人たちに対し、聖徳太子の十人以上の声を聞き取る能力や紫式部の源氏物語推し、綱吉の犬公方いじりや吉宗の暴れん坊将軍いじり、足利義満の金こだわりなど、分かりやすいアイコン的な立ち回りで終わっていたことですかね。
ちゃんと各偉人たちのキャラクターを立てていればポリティカル・コメディとして振り切ったものになっていたのかもしれませんが、変に政治的なメッセージ性を込めようとしたものだから、ちょっと浅めな仕上がりになっていましたし、技術的にSFチックではあったものの、こんな感じのイロモノ政治で果たして本当に現実の国民の政治に対する興味や参加意思に繋がるかどうかは個人的には微妙な印象です。
それこそ今作が製作されることでこうまでしないと国民は政治に関心持てないでしょみたいに思われていそうで、そんなことはないよと強くは言えないものの、実際にここまで大胆な政策を押し進める政治家がいたとしてもそんなに大きく変わるものかと。
もう少し政治的な部分を深く描いていたらその意識も変わっていたのかもしれませんが、今作ぐらいの描かれ具合だったら、現実に対する考証が甘めだったのかなと思われても仕方ないのかもしれません。
それに登場した偉人たちが生きていた時代とは、国民の意識や技術の発展もさることながら、世界情勢や主義や思想の違いも出てきてしまうし、そこをあまり深く描き過ぎるのもどうかと思うので、もう少し話のスケールを抑えるぐらいのことはしても良かったのではないでしょうか。
終盤まで全然触れてこなかったのだから触れず終いでも問題なかったろうに、軍隊とか皇室にまで少しでも言及してしまうと、右か左の反発がありそうで、作品自体に対するものならまだしも、製作側の主張を豪華俳優陣に代弁させていたのは少し怖いところです。
あまり叩かれないといいけど……。
キャスティング的には、もう何度目かの土方歳三役山本耕史や、秀吉が光秀を探す場面に『どうする家康』で光秀を演じた酒向芳がいたとこは面白かったです。
あとはあからさまに「どうする家康」とセリフで出てきたり、途中で『光る君へ』をパロった大河ドラマの主演に紫式部が選ばれていたりと、NHKに怒られないかと心配になりますが、それよりも『徹子の部屋』で遊びすぎていたのも悪ノリが過ぎていましたね。