Jun潤

インサイド・ヘッド2のJun潤のレビュー・感想・評価

インサイド・ヘッド2(2024年製作の映画)
4.0
2024.08.01

ディズニー・ピクサー最新作。
2015年の一作目公開から9年ぶりの続編。
前作は鑑賞済(未レビュー)。
前作の時点でだいぶ感動した気がしますが、内容をだいぶ忘れてしまっていたので、あらすじを読み込んで記憶を掘り起こしてきました。
今作ではライリーが思春期に突入し新たな感情たちも登場。
人間の感情たちの世界ということで、ライリーに似た境遇の人だけでなく色んな人の心に響きそうな予感がするので、泣く準備をして今回は吹替版にて鑑賞です。

高校入学を控えたライリーの頭の中では、今日もヨロコビ、カナシミ、イカリ、ムカムカ、ビビリら感情たちが大忙し。
ライリーの“幸せ”のため、様々な感情が表出し、その度に色んな記憶が生まれ、大切なものは大切に、不要なものはゴミ捨て場へ。
そんなライリーはアイスホッケーの試合で活躍し、トレーニングキャンプに誘われる。
その日の夜、キャンプに備えて就寝する感情たちだったが、謎のランプが点灯、その上、司令部のリフォームが始まってしまう。
翌朝、目が覚めたライリーは些細なことに対しても感情が爆発。
キャンプに向けてライリーは憧れのチームに入れるように意気込むが、親友たちから違う高校に行くことを告げられてしまう。
キャンプ地に到着したライリーの頭の中では、これまでに無い感情が起こり、彼女の成長の過程で新たに生まれた感情たち、シンパイ、イイナー、ダリィ、ハズカシが現れる。
ライリーに新しい“自分らしさ”を作るため動き出すシンパイたちは、これまでのライリーの“時分らしさ”を守ろうとするヨロコビたちを保管庫に閉じ込めてしまう。
キャンプ地にて、先輩に対する憧れや親友たちとの別離、将来への不安など、初めての感情に振り回されるライリーを守るため、ヨロコビたちはライリーの頭の中で大冒険を繰り広げる。

まず前作の内容についてもライリーについてもうろ覚え状態でしたが、序盤の成長したライリーの姿に早速涙腺をやられました。
そして思春期という、多くの人が通ったであろう時期に現れる、心配や嫉妬、恥ずかしさや倦怠感などの、身に覚えのある感情たちの姿。
それだけでなく、思春期の前にもあった感情がある時期を境により強く表出してしまうという、ティーンエイジャーあるあるな様子も描かれていて、そんな姿に僕の頭の中にはナツカシが。笑
また、作中でも表現されていたように、忘れ去ってきた多くの記憶の中に“自分らしさ”が埋もれていくという、既に思春期が過ぎ去った人たちにも刺さるような描写が多々ありました。
『トイ・ストーリー』シリーズは、おもちゃで遊んでいた頃に見ると親近感を、それを過ぎた頃に見るとノスタルジーを感じていました。
今作を鑑賞した人の頭の中では、思春期真っ只中のティーンエイジャーも、思春期を過ぎた大人たちも、同じような感情の嵐が巻き起こっていたのかもしれませんね。

まずは映像について。
さすがのピクサー・クオリティで仕上がっている3DCGのヨロコビたちがグリグリ動く姿やライリーの頭の中に広がる世界の壮大さに加え、カートゥーンアニメのようなブルーフィー&ポーチーやゲームのようにしか動けないランスなどの、新たな表現を観れました。
現実世界でライリーの身に起こる出来事は、必ずしも観る人全員が共感できるものではないかもしれませんが、今こうして映画だったり目の前の出来事だったりに対して、自分の頭の中にもこんな壮大な世界が広がっているのかもしれないと、明らかな異世界を舞台にした他のピクサー作品には無い親近感も感じ取れたと思います。

次はキャラクターについて。
現実世界の登場人物に対する印象は、薄いのが今作の特徴の一つでもあると思いますが、前作にもあった他の人の頭の中の様子が今作でも描かれていたので、それぞれの家族愛や友情もちゃんと出ていましたね。
しかしなぁ、今作で一番惜しかったのはイイナーの存在ですかね。
思春期だけでなく、“自分らしさ”の形成や続々と生まれてくる思い出たち、他の感情の動きにも影響を与えるであろう嫉妬の感情。
特にライリーのようなティーンエイジャーにはどうしても着いて回るであろう、特に重要と思われる感情だけが、あまり上手く機能していないように感じました。
他の新たな感情たちがそれぞれの感情らしく動き、ライリーの行動にも影響を与えていたため、特にそう感じたんだと思います。

上述の、たくさんの記憶の中に埋もれる“自分らしさ”や、記憶の奥底に仕舞ったために頭の中で存在感を発揮していた頃とは全然違う印象に見えるかつてハマっていたキャラクターたち、ダルいからと考えるのをやめた時突然思考の流れの途中に崖が生まれること、心配のあまり最悪の想像をして眠れなくなったり、ヨロコビの感情だけではライリーのことを幸せにすることができなかったり。
そしてヨロコビたちが勝手に不要と判断していた記憶の数々も、実は本当の“自分らしさ”を形成するためには必要不可欠なものであるという、生まれた時からライリーの頭の中にいるヨロコビたち、思春期の彼女の頭の中に現れるシンパイたち、彼らがいつも一緒にいてくれることで、決して無くならない、見つからなくなっても必ず探し出すことができる“自分らしさ”になる。
そんな、鑑賞前の予想通り心に突き刺さってくる作品に仕上がっていましたね。

前作も確かそうでしたが、ライリーの頭の中で起きる騒動の解決に他者が不介入なのは、自分の感情、記憶、そして“自分らしさ”こそ、他人頼りではなく自分自身でなんとかしろよと言ってくれているような感じがして、個人的には好きです。

実際のところ、前作と今作で登場した感情たち以外にも色んな感情たちが人それぞれの頭の中にいるんだと思います。
果たして自分の頭の中ではどんな感情たちがどんなことを話し合って、どんな冒険を繰り広げているのかと、自分の感情のことだからこそ想像をいくらでも膨らませやすい良い作品ですね。
Jun潤

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