ノラネコの呑んで観るシネマ

ふれる。のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

ふれる。(2024年製作の映画)
4.5
離島で育った三人の幼馴染の少年は、島の祠で見つけた謎生物“ふれる”を介することで、お互いの心の中を読み取れる様になる。
以来10年以上、上京し同じ家に暮らす現在も親友であり続ける三人だが、ひょんなことから女性二人が加わったことから、関係が壊れはじめる。
長井龍雪、岡田麿里、田中将賀の鉄板のトリオの四作目は、ファンタジー要素を触媒とした、ある種の青春心理劇。
ふれるは島の伝承にある神様や妖怪の類の様だが、この手の存在は常に裏表がある。
主人公たちは、ふれるという言わばチート機能を使ったことで、皆小学生のままコミュニケーション能力が止まってしまい、社会生活に支障をきたしている。
人間は以心伝心ではないので、成長と共に言葉の持つ力や怖さを知ってゆくが、彼らにはこの経験がない。
さらに終盤になると、ふれるには人をダメにする更なるチート機能があることが明らかになり、体は大人、心は少年のままの主人公たちは、現実とファンタジー、両方に向き合うことを余儀なくされる。
昨年「アリスとテレスのまぼろし工場」というラジカルな傑作をものにした岡田麿里、さすがの仕事で、過去作よりも一段と高度なことをやっている。
提示される問題が結構複雑なのだが、文字通りに絡み合った糸を綺麗に解きほぐしてゆくのはストーリーテリングのカタルシス。
素晴らしい作品だが、ストーカーの設定はあんまり生きてないので、別のやり方でも良かったんじゃないかしら。
凝りすぎて、ちょっとノイズになってしまっている気がする。
ブログ記事: ふれる。・・・・・評価額1650円
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