時代劇のタイムスリップものなんて、小説でも映画でもTVドラマでもこれまで山ほどあるのになぜ今さら・・・タイトルもベタだし(もちろん、履くと時間旅行ができるスリッパではありません)。
などと思い観に行く予定は全くなかったんですが、長年の友人のススメで急遽予定変更。
で、面白かったです。観てよかった。
ポスト『カメラを止めるな!』と言われているようですが、なるほど本作も低予算の自主制作映画で、クチコミで人気が出て全国公開が決まった作品だとか。
でも、どちらかと言うと『カメラを~』は学生の自主制作のノリでしたが、本作はスタッフ・キャスト共に年齢も少し上で、無名ながらも皆こだわりの職人芸をキッチリ見せてくれたという印象。
アイデアも最初は古臭く感じましたが、前半の妙な安定感は古典落語を聞いているような心地よさだったし、後半は幕末の侍の衰退と日本のTV時代劇の衰退を重ねた展開で、時代劇ファンのオヤジとしては胸に迫るものがありました。
2時間越えなのにテンポも劇伴も良くて飽きませんでしたし、時間差タイムスリップというのもちょっと面白かったと思います。
主要キャストに『カメラを~』のような素人っぽさが無かったのもマル。
特に主人公の高坂新左衛門を演じた山口馬木也は名前こそ知りませんでしたが、何度も見かけたことのある俳優で、本作の会津弁での熱演はとても印象的。
欲を言えばもう一人のベテラン時代劇俳優の役は本当に知名度のある俳優に演じて欲しかったんですが、自主制作ですから無理ですよね。
過去からタイムスリップしてきた侍が、過去に戻りたがるのではなく、日本の時代劇を絶やさないため切られ役のエキストラを続けるという脚本は地味ながらとても味があります。
近年は『仕掛人梅安』『鬼平犯科帳』『碁盤斬り』など、時代劇の良作もチラホラ。
本作は自主製作ですから、もう少しなんとかと思った部分やつっこみどころももちろんありますが、激減した日本の時代劇を絶やしたくないという思いはこれらメジャー作品に負けてはいません。
時代劇ファンたる者、応援しないわけにはいきませんよね~。