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侍タイムスリッパーのTSのレビュー・感想・評価

侍タイムスリッパー(2023年製作の映画)
3.6
【公開1館から全国へ】77点
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監督:安田淳一
製作国:日本
ジャンル:時代劇・コメディ
収録時間:131分
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 2024年劇場鑑賞25本目。
 異常に口コミが良いので気になり2ヶ月遅れくらいで鑑賞。公開1館だったところから反響を呼び全国公開となった、『カメ止め!』と似た経緯を辿っているインディーズ映画です。タイトルやあらすじからも唆られるものがあり、幕末の武士が現代にタイムスリップし、時代劇での斬られ役として名を馳せていくというものです。正直、かなり期待してみにきたので、少し物足りないところはあったものの、十分面白かったです。前半はかなりコメディ風、後半はややシリアスな要素があるので作風の順番は『カメ止め!』とは真逆になります。

 幕末の会津藩士である高坂新左衛門は、夜な夜な長州藩士を討つために出かける。お互い名乗り、睨み合いをする中、雷がなり、高坂は見覚えのないところに到着するのだが。。

 確かに現代における時代劇の需要はかなり減ってきているといえます。そんな中、必死に時代劇をつくる人たちが輝いてみえます。もちろん高坂は、やや違和感を抱くものの現実の世界だということで、役者に助太刀をしようとして監督に叱責を喰らうなど、笑ってしまうシーンが続きます。文明の利器にいちいち全て驚かずに、すんなりと受け入れていくところは賛否両論ですが、自分は武士の道でしか役に立てないということを割と早くから理解していきます。

 今作は前半が頗る良いので、後半のあの人物に出会ってからの展開が少しイマイチと感じもったいないと思いました。確かにあの展開もありなのですが、だからといって真剣勝負に持ち込むのも違和感がありますし、よくそんなことokしたな、と現代側の人間にもツッコミをいれたくなります。また、そのパートが長いのでトータル130分くらいあるんですよね。『カメ止め!』は最後テンポよく爽快なほどのネタばらしをして鑑賞者を笑かせて100分以内でおさめていましたが、今作は最初に笑かせて、後半シリアスにして笑えなくしてしまい、結構冗長的でしたのでまずまずといった評価になってしまいました。ジャンルも『カメ止め!』と全く違うので比較するのは間違いかもしれませんが、経緯が似ていたので今回比較させていただきました。

 ただし、高坂が懸命に殺陣シーンを練習しながらも、ほぼ死滅しかけている時代劇、すなわち武士の時代の魂を後世にも繋げていきたいという気持ちも伝わりましたし、今作全体を通して、昨今の映画界へのメッセージだとも受け取れます。高坂が泣きながら画面越しに時代劇を見ているところからも、時代劇はやはり勧善懲悪が売りと思われますので、お茶の間を賑やかにさせてジャンルとなっていたのだなと感じました。

 そしてこういう作品がどんどん口コミによって広がっていき、評価されるのも良い傾向だと思います。やや辛口となりましたが、かなりの期待をして見にいってしまったということからなので、普通に楽しめた作品でありました。失礼ながら、知っている役者の方はほぼいなかったのですが、この作品でブレイクしていただけたら嬉しいです。
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