このレビューはネタバレを含みます
2024新作_095
"欲しい"は止まらない。
ちょうど"速歩き"のスピードのまま――。
【簡単なあらすじ】
11月、流通業界最大のイベントのひとつ“ブラックフライデー”の前夜、世界的なショッピングサイト最大手から配送された段ボール箱が爆発する事件が発生。やがてそれは日本中を恐怖に陥れる謎の連続爆破事件へと発展していく—―。関東の4分の3を担う巨大物流倉庫のセンター長に着任したばかりの舟渡エレナは、チームマネージャーの梨本孔と共に、未曾有の事態の収拾にあたる。
誰が、何のために爆弾を仕掛けたのか?残りの爆弾は幾つで、今どこにあるのか?
決して止めることのできない現代社会の生命線 ―世界に張り巡らされたこの血管を止めずに、いかにして、連続爆破を止めることができるのか?
【ここがいいね!】
日本でもかなり市民権を得てきた「ブラックフライデー」という通販業界のイベント。
その中のある3日間を舞台に、荷物の中に爆弾が仕掛けられているかもしれないというサスペンスです。
今、爆弾はどこにあるのか?爆発の被害者に共通点はない。誰が爆弾を仕掛けたのか?いろいろな視点で切り取りながら考えさせられました。
最終的には、映画全体として物流、特にEC、そしてそれを含めた大量消費大量生産、さらにそれに関わる労働問題など、いろんなところに矢印が向かって、非常に射程が長く深い作品だったかなと思います。
特に物流の話をするのであれば、作品の中である商品がどのような工程をたどって消費者のもとに届くかというところを流れるように説明していて、それがさらに「この中のどこかで爆弾が仕掛けられたかもしれませんよ」という含みにもなっていました。
そして、その中で生きている人々、いろんな場所でいろんな部分を担当している人たちの群像劇。
さらに言うならば、『アンナチュラル』や『MIU404』の法医学部門や警察のドラマを持って行きながら展開されていた作品だったかなと思います。
【ここがう~ん……(私の勉強不足)】
実際に爆弾が仕掛けられて、その爆弾を仕掛けた犯人がいるわけですが、さらにそれがあることの復讐として問題提起として怒っていく中で、その犯人がある理由によってもうすでに蚊帳の外、つまり作品の流れに関わることがない展開になっていくわけです。
満島ひかりさんや岡田将生さんが演じる登場人物がその中で右往左往しているだけというところが、良くも悪くも中心が不在で心もとない感じがありました。
中心が不在だからこそ、そのもどかしさや虚しさにつながるのかもしれませんが、非常にやるせない気持ちを見ている側に投げかけるような作品になっていたかなと思います。
また、物流の流れが説明されている冒頭の方で、もっと具体的な表現の仕方があると良かったかなと思います。
満島さんや岡田さんの口での説明、言葉でのセリフによってそれが終わってしまっていたので、もっと一つの商品だけにフォーカスをして映像で見せるとかいうのでも良かったのかなと思います。
ただ、作品の中でも「3億個」というワードがあったように、すべての荷物にそれが適用されるかどうかというところも微妙なところなので、難しいところだったかなと思います。
【ざっくり感想】
『ラストマイル』という作品が公開されるというニュースと共に、『アンナチュラル』と『MIU404』のドラマの世界とつながっているということで、初めて2つのドラマを見たわけですが、それぞれのドラマの世界登場人物がもっと食い込んで来て欲しかったなというところはドラマを見て予習してこの作品に臨んだ者としては思いました。
しかし、これはどこまで行っても『ラストマイル』という作品であり、『アンナチュラル』や『MIU404』のスピンオフではないんだという宣言としては真っ当な作り上がりだったのかなと思います。
物流の2024年問題の真っ只中に現代に一石を投じる、それはドライバーだけの問題ではなく、それを管理する上、またその上のさらにその上のところにこの作品が届くように、届かなければいけない、そんな作品だったのかなと思います。
あとは、ある事情で一言も発さない中村倫也さんが、かえってあらゆることを物語っているという、その造りや脚本も素晴らしかったなと思います。