櫻イミト

戦慄の七日間の櫻イミトのレビュー・感想・評価

戦慄の七日間(1950年製作の映画)
3.5
原爆サスペンス映画の先駆作。イギリス各所の全面協力による無人のロンドン市街描写で知られる隠れた名作。

英国首相に科学の教授から脅迫状が届く。「政府が核兵器の製造を中止しなければ、一週間後の正午に新型核爆弾をロンドンで爆発させる」。政府は全力で彼を探すが見つからず、最悪の事態に備えてロンドン全市民の疎開を決行する。予告の期日は迫る。。。

オチが少々弱いが経過描写に見ごたえがありなかなか面白かった。1945年に日本に原爆が落とされ、1949年にソ連で初の核実験が行われた。本作が作られた1950年は東西冷戦の元年であり、タイムリーな着想だったと言える。

ラジオを通した首相の呼びかけに始まる市民の疎開。その描写はドキュメンタリータッチで有事のシュミレーションの様。当時のロンドン市街各所の様子も興味深い。教授の潜伏先を、猫を飼う女主人の宿、犬を飼うベテラン女性歌手の家と、ペットと暮らす年配女性に限っているのが意外に演出として効いている。日常の平和の中に世界平和を求める教授を置くことで、問題提起の幅を広げていたように思う。

amazone primeの配信で観たのだが、上下が大きくトリミングされていて気になった。それ以上に気になったのがレビュー欄で、他作品に増して各レビュアーの政治的バランスや教養の度合いが滲み出ていた。観る者の民度を測るのに丁度よい一本と言える。
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