「現実の分断/分極化」をロードムービーとして切り取るSF寓話。今年の重要作だと思う。
現代版『地獄の黙示録』という触れ込みの一方、実際は戦場カメラマンを主人公に引いた目線で戦闘現場を目撃する『危険な年』や『プライベート・ウォー』と比較されるべき一本。イギリス人であるアレックス・ガーランドのアメリカに対する冷静な視点が、この一歩引いた戦場カメラマンの視点とシンクロする。
主人公を戦場カメラマンに設定した事で映画に奥行きが生じ、「絶望的な状況に対して『カメラ』=『映画』は何ができるのか?」を問う。その問いに対するアンサーは絶望的で、アレックス・ガーランドの諦観、厭世的な感覚が悪く出てしまっていると思った。戒めとして本作をアメリカについての映画としてだけ観てはいけないと思った。「ミズーリの人になるな」【記録】