Jun潤

シビル・ウォー アメリカ最後の日のJun潤のレビュー・感想・評価

3.9
2024.10.07

A24製作。
監督は『エクス・マキナ』『MEN 同じ顔の男たち』のアレックス・ガーランド。
A24史上最大の製作費とのことですが、A24にしては過去ではなく近未来を舞台にしてゴリゴリの社会派作品を製作するというのも珍しい気が。
アメリカの社会情勢には疎いもので、内戦が起こる可能性が果たしてどれほどあるのかいう感じですが、現実の世界情勢的にも今作は見逃せませんね。

内戦勃発中のアメリカ。
テキサスとカリフォルニアの同盟からなる“西部勢力(WF)”と政府軍による激しい戦闘が各地で繰り広げられていた。
戦場カメラマンのリー、ジャーナリストのジョエルは、老記者のサミーと新人戦場カメラマンのジェシーと共に、大統領を取材するべくワシントンD.C.へと向かう。
その道中で4人は、戦争の現実と向き合っていくー。

これは良い意味で予想が裏切られましたね。
てっきり社会的な背景から内戦を描いて終戦までいくのかと思いきや、作品開始時点で内戦が勃発しているしなんならもう終わりかけているしな状況の中で、戦場カメラマンやジャーナリストの視点から見る戦争の姿が描かれていました。
作中でリーやジェシーがカメラで切り取る戦争の一場面は、フィクションのはずなのに現実に起きているのではないかという臨場感を放っていたように思います。
昔の戦争の様子を伝えたりドラマとして描くのに実際の写真や史実の説明を使っているのはこれまでにも見てきましたが、今作は現代で起きる戦争の様子を現代に生きる人間が記録するモキュメンタリー。
兵士たちが使用する武器や記者たちが使うツールなども現代的で現実の自分たちに通じる部分が多かったため、現実的な恐怖が常に画面内にありました。

ストーリーとしては4人のジャーナリストたちによるロードムービーの形をとっており、その道中で傷を負った国内の様子や難民キャンプ、ボロボロのテーマパークや転がる死体などを目にしていくという、戦争の実態を描く意味ではこれ以上ないほどの設定と話の構成でした。
リーとジェシー、二人の戦場カメラマンに注目してみても、場慣れしているリーに導かれるまま戦場へ駆り出し、最初はピントがズレた写真を撮っていたジェシーも、終盤になるにつれて自らどんどん前線へと駆けていき、目の前で人が撃たれてもその瞬間を写真に収めるという成長、もしくは目の前の現実を受け入れるという意味では大人に一歩近付いた姿を見せていましたね。
今作で描かれた戦争は一応架空のものでしたが、実際に過去にも現在にも、銃ではなくカメラを構え、銃弾が飛び交い爆弾が爆発し自分の隣や目の前で人が死んでいく中で、戦争の実態を記録する人たちがいるんだということが伝わってきました。

戦争ものというと極限状況に陥った人間の狂気などが描かれがちですが、今作におけるそれは愛国心だったのではないかと思います。
反政府軍にも政府軍にも、何か別の目的があるとかではなくあくまで純粋にアメリカという国のために戦う兵士たちが登場していました。
しかし作中に登場する兵士たちが守りたいアメリカとはなんだったのか。
アメリカという箱なのか、既得権益なのか、どちらでもなくどうかなんの罪もないアメリカ国民のために戦っていて欲しかったものですが、作中の描写的にはその愛国心が強すぎたが故の暴走を描いていたのかと思います。

映像的にはさすが史上最大の予算をかけているだけあって、本当の戦地なんじゃないかと思わせるほどの道中の場面のほか、ラストのワシントンD.C.内での大規模な戦闘シーンはもう迫力満点でしたね。
アメコミヒーローものでも大規模なアクションシーンは描かれていますが、あちらの方はヒーローvsヴィランの人外決戦で、こちらは人間vs人間だった分、生々しさがあるものだったと思います。
他にも突然鳴り響く銃声や爆発音など、今回は通常上映で鑑賞しましたが、IMAXやDolby Cinemaで鑑賞するとそれはそれは大迫力の映像が観られると思うので、これから鑑賞する方にはぜひともそちらでの鑑賞をおすすめしたいですね。
Jun潤

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