このレビューはネタバレを含みます
アメリカが、分断によって内戦が勃発したら、という世界線。
ディストピアものというと、近未来など少しファンタジーな世界観で表現されることが多いように思うけど、この映画では年代は特定しないが現代のように見える。現実のアメリカを見ても、あり得ないとは言えない。
独裁的な指導者、群衆心理による判断力の低下、みたいなところを描くのかな、と観る前に想像していたが、フォトジャーナリストを主人公に据えたロードムービーのような、ジャーナリズムを考えるような、そんな内容だった。
話の軸だと思っていた内戦については、あまり詳しいことは描かれていない。ニューヨークからD.C.までの移動する間に、ガソリンスタンドの武装した民間人、農家の謎の狙撃手、死体処理現場と緊迫するポイントがあるけど、それ自体がなんなのかということは明示されていない。
彼らが政府側なのか西部勢力なのか、「どのアメリカ人なのか」ということもわからない。この「説明しなさ」が丁度よいのかもしれない。『曖昧にすることで寓話性を高める』という批評に同意。
D.C.では、頼もしくなったジェシーの昂揚が伝染する。
撮った写真を挿入するなど、途中途中で入り込む「写真を撮る」という効果・行為を考えると、フォトジャーナリストを追うドキュメンタリーのようにも思えてくる。ストーリーとしては想像と違っていたけど、写真を撮る者として観てよかったなぁと思う。
リー。ポスター写真以外の情報をほとんど入れていなかったので、冒頭のキルスティン・ダンストの登場にびっくりした。少し気だるげな感じにも捉えられる落ち着きがかっこよい。
ジェシー。最初の修羅場ではジョエルが後ろから引っ張って安全を確保していたけど、D.C.ではもう戦場カメラマンとして独り立ちしていた。演じたケイリー・スピーニーがかわいい。
ジョエル。外見は好みだけど、どこかで「この人信じていいのかな」と思っていた。全く問題なかった。
サミー。リーやジョエルが信頼するジャーナリスト。状況の判断について助言を請うことからも数々の死線を掻い潜ってきたことを想像する。ジェシーを見守るまなざし。