悪魔の心臓を持ちながらデビルハンターとして奮闘する少年を描いたアニメ作品。
原作は藤本タツキのコミックでTVアニメの劇場版。
監督は吉原達矢。
主題歌は米津玄師の新曲”IRIS OUT”で、米ビルボード・グローバル・チャート”Billboard Global 200”で日本語楽曲として史上最高の5位。
ED曲は米津玄師と宇多田ヒカルのデュエット”JANE DOE”。
学校に通ったことのない16歳のデンジは、公安対魔特異4課に所属するデビルハンター。ある日、淡い恋心を寄せている女性上司のマキマに誘われて、映画をはしご鑑賞する。マキマと別れた後、夜の帰り道で雨に降られたため公衆電話ボックスで雨宿りをしていると、そこにカフェで働く少女レゼが雨宿りのために電話ボックスに飛び込んできた。デンジはレゼと一旦は別れるが、その後、彼女に会うためにカフェに行くと、お礼として一杯のコーヒーを御馳走される。レゼに恋心を抱いたデンジは彼女に会うために毎日カフェに通う。レゼは、学校に行ったことの無いデンジに対して深夜の学校を案内し、黒板で足し算や英語を、プールで泳ぎ方を教える。しかしレゼは一人でトイレに行った際に悪魔に襲われてしまう....
原作未読、TVアニメ未鑑賞でも十分楽しめるTVアニメの劇場版作品。
16歳の少年が抱く、年上のお姉さんへの憧れや同年代女子への恋の葛藤などの思春期少年の微妙な心情が微笑ましい。
オープニングは原作コミックから飛び出したようなモノクロのシーンで始まり、上手くカラーシーンに繋げるなど原作ファンへのサービスを兼ねた演出が凝っていて作品に引き込まれる。
主人公である16歳の少年が抱く職場上司の年上女性への淡い想いに”ドキドキ”させられ、はしご映画鑑賞デートなど劇場版ならではの映画ファンに対する配慮が心憎い。
公衆電話ボックス、タウンページの分厚い電話帳、フェンダーミラーのバン型自動車、未塗装で黒いバンパーの大衆車、オレンジ色の中央線列車、東北新幹線初代200系車両、東京タワーなど昭和60年前後の情景が味わい深い。若者だけでなく昭和世代も楽しめる工夫がなされている。
ユーモアを交えながらも、ちぎられた腕、切断された脚、もぎ取られた首、大量の血など、血生臭くてグロイシーンがあり、笑いとシリアスのバランスが絶妙。
6つ目で4本脚のサメ君などのサブキャラ達によるナイスサポートが作品を盛り上げる。
タンクトップに白いパンツ姿の美女ビランがちょっぴりエッチ。
”田舎のネズミと都会のネズミ”の物語を軸にストーリーが展開し、後半では壮絶なバトルが繰り広げられ、終盤では嘘の中の真の愛に切なくも哀愁が漂う。
「何で初めて会った時に殺さなかったんだろう」
「ねえ都会はいいとこかい?」
作品冒頭は16歳の少年が二人の友人と夜通しで過ごして散らかったアパートの一室で目覚めるシーンで始まり、ラストはきちんと片付いたアパートの一室から一人で出ていくシーンで終わる。何事も無かったまったりな猫に対して、少年のカミング・オブ・エイジを三人の女性を通して描いた奥の深い作品でもあり感慨深い。
2025.10 鑑賞