ドイツの名匠ファティ•アキン監督作品、鑑賞8本目。
監督は若くしてその才能が認められ、ヒューマンドラマ、コメディ、サスペンス、ホラー、音楽ドキュメンタリーとジャンルを問わずに制作し続け、どの作品も高く評価されている。
この最新作は全作品の中で興行成績がトップとなり最も成功した作品となった。
ドイツのラッパーで音楽プロデューサーでもあるXatar(カター:意味はクルド語で危険⚠️)ことジワ•ハジャビの実話を基に大胆に脚色した半自伝の映画化。
ジワはクルド人の音楽家の両親のもと、イランの洞窟内で産み落とされた。それはイスラム革命により迫害を受けていたためで、小さな頃の想い出は刑務所の中だったという悲惨な過去がある。数年後に一家はドイツに亡命し、ジワは9歳でピアノを習える生活になったが、父親が愛人を作り逃げるように去ってしまう。それからは母子家庭で一転貧しい生活を強いられた。街中で不良に殴られ、歌の上手い親友サミーから助けられたが、負けん気の強いジワは仕返しするためにボクシングを習って力を付ける。そこで"カマー"名が付いたのだが、同時にラップにも出会い音楽を楽しんでいく。仕返しを胸に刻み、数年後にとうとう不良たちをコテンパンにやっつける日がくる。
家計の助けのつもりで始めた麻薬の密売で刑務所へ。出所後は稼ぎたい一心で金塊強盗を手がけてしまい8年の禁固刑となる。しかし無駄な時間を有意義にと、その間に監視の目を盗み、こっそりレコーディングしアルバムを作ってしまう。それが世の中に流れ出し人気を得て行くのだった...
いやいや、これが本当に実話?と驚きっぱなしの人生だが、時系列も分かり易くなっていてごちゃつかない。悪いことをやっているのに、動機はあくまで母親を助けたい一心。なぜかカッコ良い人間に見えてしまうのは、演出力とキャストの魅力も手伝っているのだろう。
ジワ役はミュージシャンでもあるエミリオ•ザクラヤ。キレのあるファイトな演技は抜群でした。
作品を選ぶ際、監督は好きだけど知らない音楽家だし、馴染みのないラップ音楽⁇と半信半疑で観始めたけど、内容が濃くテンポも良くノリ最高で十分楽しめました。
音楽好き、クライム好き、波瀾万丈人生に興味ある方にお薦めしたい。